こんにちは、Class of 2020のR.Iです。
Boothでは、日々のクラス以外にも様々な機会があり、その多さに目が回る日々です。今回はそんなクラス外の機会の一つとしてケースコンペ(Case Competition)をご紹介します。ケースコンペは、様々なテーマ(Consulting, Investment Management, Venture Capital, Private Equity, Healthcare, Tech, Design等)に沿って、与えられたテーマに対する提案・プレゼンテーションをグループで行うイベントです。授業での学びをより深めるだけでなく、多くのゲスト審査員・学生の前でプレゼンテーションを行ったり、グループワークを進めたりする中での実践的な学びも魅力の一つです。日本人学生も各種ケースコンペにて活躍しておりますので、いくつか具体例を紹介させて頂きたいと思います。
1. Oxford Chicago Global Private Equity Challenge (Class of 2020 R.I)
BoothにはPolsky CenterというEntrepreneurship・Private Equity・Venture Capitalの分野における就活支援や各種プログラム企画を行っている機関があります。このPolsky CenterとOxford Said Business Schoolとの共催で、両校の参加学生チームがPrivate Equityによる買収ケースに取り組むのが、Oxford Chicago Global Private Equity Challengeです。
概要としては、5人ずつ学生のグループを作り(昨年はBooth側で20チーム以上参加)、2週間程の期間の中で25ページのプレゼン資料とフィナンシャルモデルを提出。その中で6チームがInterview Roundに選ばれ、シカゴにあるPEファームのパートナーの前で発表。その後3チームがSemifinal Roundに選ばれ、大教室でパートナー・Booth生の前で発表。最後に1チームがFinal Roundに選ばれ、Oxfordの代表チームとプレゼン対決という内容になっています。(場所は毎年BoothとOxfordで交互に開催)
お題は、Polskyが選んだ270社程度の上場企業のリストを与えられ、LBO投資に最適な買収対象企業を1社選ぶところから始まり、業界・対象事業分析、過去の財務分析、将来のビジネスプラン、バリュエーション、キャピタルストラクチャー、買収後の100日プラン、リターン分析、今後のDD項目、とバイアウト投資に係る全てを網羅する提案をせよというもの。私のチームはPE、コンサル、投資銀行、FAS、エンジニアというバランス取れたチームで臨め、Interview Roundにまで残ることができたものの、そこで残念ながら敗退という結果になりました。
終えた感想としては非常に学びが大きく満足しており、また幾つか気づきもありました。まず1点目に、PEという然程大きくない業界に対するBoothで活用できるリソースの広さです。PEバックグランドのチームメイト、過去のコンペ資料、シカゴのPEのパートナーからのQA・フィードバック等、あらゆる点から学びを深め、結果としてアウトプットのレベルを高めることが出来たと感じました。2点目に、チームを動かす難しさです。5人がフラットなチームで、全員のバックグランドがばらばらとなると、ミーティングや作業の進め方へのイメージの齟齬、専門用語への理解度の差と様々なとこで、スムーズにいかない壁がありました。この状況下でどうコミュニケーションを取るかが難しく、一方でMBAだからこそ鍛えられるスキルであるなと感じました。
中間試験のための勉強時間や睡眠時間等、犠牲にしたものもありましたが、とても充実した2週間となりました。
2. ABI Corporate Restructuring Competition (Class of 2020 J.Y)
ABI (American Bankruptcy Institute) 主催の事業再生系のケースコンペです。BoothにはCREDIT (The Credit Restructuring Distressed Investing and Turnaround Group) と言う、Distressed Investing(ハイイールド債などの高リスク債券への投資)や事業再生の分野を扱うクラブがあり、ケースコンペへの参加の意思表示をするとクラブ側によって1組4名のチーム組成を受けて、そのメンバーで参加しました(私以外の3名は金融バックグラウンドのアメリカ人)。
内容は、Chapter11(日本の民事再生法に類似)に申請した住居用窓の製造業者のケース課題が与えられ、当該企業のアドバイザーとして再生計画を策定し、利害関係者との交渉を行うというものです。具体的には、20ページ程度の事業再生計画書を主催者側に事前提出し、コンペ当日は、(1)債権者集会、(2)取締役会へのプレゼンテーション(各40分)を実施し、さらに上位3チームには、(3)破産裁判所へのプレゼンテーション(45分)が課せられ、再生計画の承認を取り付けるのがゴールとなります。
チームメンバー4名の中に事業再生分野に格別詳しい人間は(私含めて)いませんでしたが、Boothのクラブ側が初学者向けにトレーニングセッションを組んでくれ、Chapter11に関連する基礎的な用語解説から、実際の申請プロセスや各ステークホルダーの利害構図などをカバーすることができ、初学者でもチャレンジし易い環境を整えてくれました。課題発表から本番までの1週間は毎晩遅くまでチームメンバーと作業に当たりましたが、作業に詰まった時には、アルムナイネットワークを活かして、AlixPartners(事業再生系の経営コンサルティング会社)のBooth卒業生とランチミーティングをし、より現場の肌感覚に近い部分での一般的なアドバイスを得たりして、再生計画書の質を高めることに役立てました。
プレゼンの場では、Bankruptcy Court(破産裁判所)の現役裁判官に加えて、再生系コンサル、弁護士などの業界人が多数審査員として参加していました。彼らは、緊迫した雰囲気を演出してくれるだけでなく、各プレゼン終了後には内容からプレゼン技法に至るまで詳細なフィードバックを実施してくれ、その点は非常に学びの多いものでした。
結果は出場8チーム中2位と、惜しくも優勝は逃しましたが、他チームは事業再生分野出身者や弁護士など専門知識を備えたメンバーが多かった中で、大健闘だったと思います。
個人的には、英語力や業界知識が充分備わっていないことへの不安から、入学初期の段階でケースコンペティションに参加すること自体、相当な躊躇いがありました。ただ、実際に参加してみると、こちらが発信する意見を皆がしっかり受け止めてくれる雰囲気があり、かつBoothの持つ様々なリソースへのアクセスにより足りない知識を補うことも出来たので、「日常では経験できない本気度で、周りのメンバーと一緒になって課題解決に取り組む」という充実した経験を得ることができ、背伸びしてチャレンジして良かったと思いました。こうした未経験者であってもチャレンジし易く、かつ一定のレベルの成果を出し切るための環境が整っているのはBoothの良さの一つだと思います。
3. National Energy Finance Challenge (Class of 2020 福島)
National Energy Finance Challngeは、エネルギービジネスへ注力したプログラムが特徴であるThe University of Texas at Austin - McCombs School of Business主催のエネルギー・ファイナンスのケースコンペです。スポンサーには、石油メジャーであるExxonMoilやChevron、金融機関Wells Fargo、Lazardといった会社が名を連ねております。本ケースコンペは学校対抗となっており、各学校4,5人でチームを編成し参加します。木曜日の夕方お題が発表され、日曜の夜にプレゼンを提出、翌金曜日にオースティンにあるMcCombsでプレゼン発表が行われるというスケジュールになります。
今回のお題は、アメリカの石油企業の上流事業(油田への投資)と下流事業(ガソリンスタンド)のメキシコ市場参入のための戦略を策定するというものでした。具体的には、①上流:与えられた5つのメキシコの油田の投資採算性を評価、入札パートナーを選定し、入札対象の油田及び価格を提示する、②下流:メキシコのガソリン市場への参入において、ガソリンスタンドの自社運営、販売代理店との契約、ブランド供与によるライセンスビジネスの3つの形態の採算性を評価し、メキシコ市場参入戦略を策定する、というものでした。
私のチームは、アメリカ人(エネルギー業界エンジニア)、チリ人 x 2(PE, Consulting)、メキシコ人(PE)、そして私(エネルギー業界事業開発)という異なる経歴、国籍を持つチームでした。エネルギー業界出身である2人を含め、誰も今回のお題に直結する経験は持っておりませんでしたが、コンサル出身者がプレゼン全体のストーリー策定、エネルギー業界出身の2人がケース内容を咀嚼・伝達、それを元にPE出身の2人が財務モデリングを行うという形で、それぞれの強み・特徴を活かしてお題に取り組むことが出来ました。日曜日にプレゼンを提出後、金曜日の本番までプレゼンの練習もしっかりして臨みましたが、残念ながら1回戦を勝ち進むことは出来ませんした(2回戦が決勝)。
残念な結果ではありましたが、MBAではHands onの経験に重点を置きたい私としては、チームで働く上での学びが得られた点は非常に良かったです。一つは上にも記載しましたが、異なるバックグラウンドのメンバーが集まることで、より良いアウトプットが出せることを実際に体験した点です。コンサル・PE出身者がどのようなスキルを持っているのかをこの目で見れたことは非常に勉強になりました。一方で、多国籍かつフラットな関係のチームの中で働くことの難しさも感じました。上下関係がないため、合意ベースで議論は進んで行き、議論についていけないと自分のアイディアを取り入れることが出来ません。全体の議論がずれている時の修正や自分のアイディアを売り込む力はもっと改善していかなければいけないと思いました。
多くの学びがありましたが、本ケースコンペに参加して一番良かったのは仲の良い友達が出来たことです。チームを結成した際にはみんなでドイツビールをたらふく飲み親睦を深め、宿題や授業に忙しい中、週末に多くの時間を割きお題に取り組み、オースティンでは5人で一緒のAir B&Bに泊まり、ケースコンペ終了後は有名店でBBQを食べ、夜中まで飲み歩くなど、非常に濃厚な時間を過ごすことが出来ました。短期間ではありますが、苦楽を共にして仲を深めた友人は、MBA 2年間および卒業後においても貴重な財産だと思います。