前回の投稿につづき、米国インターン就職活動101の後編です。
2-b.オフキャンパス
概要
各社独自のニーズ・タイムラインに基づいて会社主導で行われるプロセスです。募集されるポジションの数は無数に存在しますが、プロセスの時期・スピード感・面接内容等はインダストリーは疎か、各社、各ポジションでバラバラでかなりカオスな状況です。テック就活と業界を絞っても、プロセスはバラバラで以下のような悲劇が生まれます
● 大手テック企業の面接が10月上旬(MBA留学直後!)に突如開始し準備不足で撃沈。その会社、毎年翌3月が面接時期と聞いていたのに・・・
● 志望度そこそこ高い企業から1月にオファーを獲得。オファー返答期限以降にFAANGの面接を予定していたので辞退したが、結局FAANG全滅! それならオファーをアクセプトすればよかった・・・
● Googleに応募したが何ヶ月も連絡が来ない。落ちたと思って志望度低い会社のオファーをアクセプトしたが、3月中旬に突然Googleからインタビュー依頼が来た。もっと早くに連絡してくれ・・・
オンキャンパスリクルーティングでの説明と同様に、オフキャンパスのリクルーティングプロセスを見てみましょう。やる事は基本的に一緒です。但し、それぞれの活動の位置付け・意味合いは大きく異なります。(赤字参照)
この中でも一番特徴的なのがネットワーキングの重要性でしょう。特にテック就活では従業員からのReferral(推薦)が非常に重要でこれの有無によってインタビューインビテーションが来るか来ないかの確率が大きく変わります。そういったReferralを得る為には、Linkedinなどで独自にコネクションを構築して、自分を推薦してもらえる関係を構築する必要があります。
これは時間が読み辛いプロセスであり早期に動き出す必要があります。
次に特徴的なのがポジションへの応募方法です。基本的には各社の採用HPを確認して応募をする事になりますが、各社がいつMBAインターンポジションを募集するか(そもそも採用するか否か)が非常に不透明である一方、募集開始後はローリング方式で早くに応募した候補者から面接を進める為、とにかく他人よりも1日でも早くに応募をする必要があります。どれだけ自分のキャリアがそのポジションにフィットしていても、企業にとって納得のいく候補者が先に見つかればインタビューすらされません。
上記より、オフキャンパスリクルーティングでは各プロセスにおいていかに他人より早く動けるか?が鍵となると言っても過言ではありません。
ここで、上記プロセスを改めてタイムラインで見てみましょう。先ほどの表と異なり大分混沌としている事が見て取れます。
一部の大手に当てはまる傾向がある「代表的な」タイムラインを太線で記載していますが、実際には点線で記載される時期全体を通して各活動を行う必要があります。何故なら、我々就活生は大手2-3社だけを受けて就職活動を行う訳には行きませんし、大手企業の中でもポジションによって大きく募集タイムラインが異なるからです。
また、以下がテック就活におけるサマーインターンのオファー獲得時期を示したものですが、やはりご覧の通り相当にロングテールである事がわかります。一般的に、オファーレターを受領してから1~2週間以内にアクセプトをしなければオファーを取り消されてしまいますので、準備の面もさる事ながら、時期的なコンフリクトをマネージする能力も必要です。
対象インダストリー
● テック
● スタートアップ
● PE/VC
● ヘッジファンド
● メディア・エンターテイメント
など
Tips
● 就職活動をやり遂げる為に必要な能力
上記のようなカオスな状況下で就職活動を成功させる為には以下の能力が不可欠です
○ 混沌とした状況でのプロマネ能力
○ 正解の見えない状況で自ら道を切り開く能力
○ 現状を理解し、各選択肢のリスク・利益を定量的に比較衡量する能力
幸いにして、フレキシビリティ・アントレプレナーシップ・データアナリティクスに定評のあるChicago BoothはMBAスクールの中でも特に上記能力を養える環境にありますので、Boothで学ぶ事ができたのは私にとって非常に幸運でした。
● オフキャンパスでの採用難易度について
「日本人にとって○○は楽 or 難しい」との纏め方に以前より違和感を覚えていました。というのも ①採用側は候補者の国籍を気にしておらず不正確である上に ②日本人である形質は変えようがなく、建設的なアクションに繋がらないからです。
そこで、少し趣向を変えて就活難易度を判定するMetricsを作ってみました。精度は保証しませんが、採用担当者からどの要素がどう見られているのかのイメージは掴んで頂けるかと思います。ここで特に注目して頂きたいのがいかに多くの要素が自らの努力でコントロール可能かです。就活が始まってからも諦めずに全力を尽くせば道は拓けます。
(※精度チェック頂いたBooth・他校の米国就活経験者の方々ありがとうございます!)
3. Chicago Boothの就活サポート
3-a.大学オフィシャルのサポート
就職予備校とも揶揄されがちなMBAスクールですが、Chicago Boothも就職には相当に力を入れているようで、手厚い就活サポートが受けられます。Boothには専属のCareer Serviceスタッフが10名程おり、各企業とのコネクション構築・各種イベントのファシリテート・1:1での就職アドバイスやインタビュー練習などを行っています。インターナショナル生向けのイベントも多く、就職活動の肌感覚がわからない日本人学生にとって大きな助けになります。
以下はBoothのCareer Servicesが行っているサポートのごく一部です。
GTSシステム
大学が管理するシステムで、就職活動の状況整理やレジュメ管理などができます。オンキャンパスの就職活動や各種の就職関連セミナー・1:1コーチング等の活動は基本的にこのシステムを通じて登録・管理しますCareer Service Program
全体で10時間程度の就職活動の全体像やTipsを学習するコースで、新入生は全員受講します。このコースを一通りやると効果的なレジュメ・カバーレターの作り方、自己紹介・ネットワーキング方法など就職活動に必要な知識が一通り身につきます
Career Coach/Career Advisorのアドバイス
企業のリクルーターと日々接している大学のCareer Coachや、就職活動を既にくぐり抜け成功させてきた2YのCareer Advisor等からレジュメレビュー・モックインタビューなどの様々なサポートを受けられます。面接直前の数週間は彼らやBoothの同期等と毎日のようにモックインタビューをすることになるでしょう
※なお、私もTech Industry Career Advisorとして活動をしています
3-b.Student Groupによるサポート
各業界のStudent Groupが上記Career Serviceと連携しつつ様々なイベントや就活サポートを行っています。例えばBooth Tech Groupでは企業とのイベント開催や企業/役職に応じた1Y学生同士のモックインタビューマッチング、Management Consulting Groupでは2Y学生によるモックインタビューなどです。
4.おわりに:米国就職、その先
米国で就職をする日本人MBA生は多くありませんので、やりようによって相当にエッジの聞いたキャリアを構築する事ができます。米国永住・海外ベンチャーの日本オフィス立ち上げ参画・VC資金が豊富な米国でベンチャー立ち上げ 等々・・・
とりわけ、前述の通り米国では総じて給料水準・WLBが良い為、特に仕事に拘りが無く永住を視野に入れている方にとって、リーズナブルなセカンドキャリアは無数に広がっていると言っても過言ではありません。
但し、何かしらのキャリアゴールがある方や将来的な日本帰国を視野に入れている方にとっては、仮説ベースでもキャリアゴールをしっかりとイメージしなければ危険です。例えば、将来的に外資系IT企業の日本(営業)拠点でのマネジメントを目指す人間が、IT繋がりと会社名を理由にFAANGのSourcing MgrやSCM職に飛びつくと、場合によってむしろキャリアゴールを実現不可能にしてしまう事になりかねません。特に、日本帰国を考えた際にランダムなポジションで満足していると、帰国後に付加価値になり得る ①特定の業務・業界知見 ②People Mgmt経験も無く40歳前後で帰国。求める水準の就職先に苦労するワーストケースシナリオも視野に入ってしまいます。
少なくとも①業務・業界知見に関しては就職活動時にコントロール可能な要素です。従って「米国就職」「テック就職」といったような大枠で一括りにせずに、できるだけ粒度の細かいキャリアゴールから逆算された就職活動をするように心がけるようにすると良いと思います。