LEADとは
LEAD (Leadership Exploration And Development)プログラムは、学生のコミュニティの形成、Leadership SkillやInterpersonal Skillの向上を主な目的としたプログラムで、1年次の秋学期開始前(9月)に全員が必修科目として受講することになっています。
LEADは、Cohortと呼ばれる65人程度のクラス単位で行われます。1Cohortあたり、LEAD Facilitatorと呼ばれる2年生が8人つき、その指導及び助言のもとにさらに8人程度のSquadと呼ばれるチーム単位でも各種のグループ活動が行われます。
Facilitatorとなる2年生は、授業の一環として担当教授の指導のもとで、前年度の春かプログラムの設計に取り組み、秋にはそのプログラムを1年生に対して実践します。このように、学生自らコースを設計・運営することもLEADの大きな特徴です。
プログラムの内容
秋学期の初日から、LOR (LEAD of Retreat)という全員参加の1泊2日の合宿に行きます。Cohort、Squadごとに分かれて、ゲーム、アスレチック等を行います。ただ、単純に遊ぶというだけでなくというだけにとどまらず、各種レクリエーションの中にもチームワークやリーダーシップの養成を目的とした要素が盛り込まれているのが特徴です。もちろん夜には懇親パーティも催され、一気に人間関係も広がります。
また、合宿以外にも、9月中にはCohort毎に集まって、各種の課題をこなしていきます。各授業毎に「Self Awarenessを高める」、「相手の主張や意見を正しく理解する」、「効果的なフィードバックを与える」などのテーマが設けられており、ロールプレイング、ディスカッションなどを通じて学びます。
成績はPassかFailのみで、Passの中での差はありません。基本的には出席や各課題をきちんと行っていればPassできます。一方で、成績とは別に、Squad メンバー同士の相互フィードバックやCohort全員の無記名投票による貢献度評価などで、LEADでの自分の成果を測ることができます。
2年次にLEADを主導する、LEAD Facilitatorに選ばれた場合、教授の指導の下でプログラムの受け手とは逆の立場からリーダーシップについて学べます。選考は厳しく、且つ多大なエネルギーを要しますが、非常にモチベーションが高い仲間と濃密な関係が築けると評判です。40人程度と狭き門ではありますが、例年日本人が数人LEAD Facilを務めています。
雰囲気
LEADは上述のように学生主導で行っていることもあり、その雰囲気は非常に自由で和やかで、授業中にも頻繁に冗談が飛び交うなど、普段の授業とは異なった雰囲気を味わうことができます。
Cohortメイトとは毎週顔を合わせ、一緒に様々な課題に挑戦することを通じて、絆、連帯感が深まっていきます。「失敗を恐れずにリーダーシップや対人能力を磨こう」というLEADのSupportiveな雰囲気の中で積極的にCohort、ひいてはBooth全体に貢献していくことができます。
Squadは、1年生の最初の学期をともに過ごすこともあり、非常に仲良くなる友人達を見つける良い機会となっています。
Off CampusでのLEADの楽しみ
LEADはクラスでの意見交換にとどまらず、様々なアクティビティを含んでいます。上述ののLOR(合宿旅行)は代表的な例です。
他にも、Cohort Dinner、Squad Dinnerや、Golden GargoylesというCohort毎に企画編集する短編映画のコンテストなどもあり、学生が日頃とは違った才能を競って目一杯楽しみます。
LEADの良い所について
(1) 練られたプログラム
20年以上続くこのプログラムは毎年改良に改良を重ねて今に至っているとのこと、それも納得のいく練られたカリキュラムだと感じました。上記の具体的な内容もそれぞれ目的が明確で、その順番も段階を踏んで自分についての考察を深めるのに効果的と感じました。先日、internationalの生徒何人かが集められ、このプログラムを担当しているスタッフとの昼食会がありましたが、彼らはプログラム改善のための必死に考えているんだな、というのを強く感じました。
(2) 時期
リーダーシップとは何か?という問いに答えは無いと思います。基本的に求められる素養はあるにせよ、やはり自分なりのリーダーシップ像というものを描き、日々MBAでの2年間の経験を含め実践していくことで自分を磨いていくことが必要なのではないでしょうか。こういった観点から、このプログラムは2年間のMBAプログラムの一番最初に組まれているということは、大変重要な意味を持っています。同時に、Boothではリーダーシップを発揮するための本当にたくさんの機会(学生グループや学生委員会などのポスト)が提供されています。つまり、LEADプログラムを通じて学んだことを、しっかり今後2年間で実践する仕組みができているということです。
(3) チーム
無作為に様々なバックグランドの小グループが決められています。きっと、普通にMBA生活をして、ある程度興味の近い人たちと固まっていたらきっと仲良くならなかったであろう人たちとのグループは新鮮です。私は、国籍は米国3人、オーストラリア1人、台湾1人との6人グループでした。バックグランドも、バンカー、エンジニア、NGOやNPO職員、資源開発のプロジェクト開発担当者、行政官といった感じで多様です。「なんだこいつは!?」と思うこともあったりしますが、海外MBAに来たんだなー、という実感がわいたのも事実。とても面白い経験でした。
終わりに
シカゴ大学MBA、といった時にどういった印象を皆さんは持っていますか?正直に言うと、私はアカデミックな観点や授業について良い印象は持っていましたが、チームワークやリーダーシップといったソフトスキルを伸ばすという観点では、シカゴ大学について大した印象を持っていなかったです。しかし、実際に来てみて、シカゴ大学MBAは、個へのリスペクト、個の力を伸ばすということに重点を置きつつ、LEADプログラムというとてもよく練られたカリキュラムから始まり、各自のソフトスキルを伸ばし、真のリーダーを養成するためのものとして、とても素晴らしいなと感じています。
サッカー日本代表も組織力だけでなく、それはあって当たり前で、その上で、今後は一人で現状を打開する個人の能力が求められているわけで、もちろん、私はサッカー日本代表を目指しているわけではないですが(笑)、不確実性の多いビジネスの世界でも同じアナロジーが存在していると思います。シカゴ大学のMBAプログラムを通じて、ソフトスキルを含めた個人の力をしっかり伸ばせるよう、今後充実した2年間をしっかり過ごして行きたいと思います。
Chicago Boothのリーダーシップ教育について
(Class of 2013の生徒より寄稿)
一言でこの環境をまとめると、シカゴブースは「答えの無い『リーダーシップとは何か』という問いに対し、各自がもがき苦しみ経験しながら学ぶためのプロセスや思考の材料を提供する場」ということだと思います。これについて以下、3つの具体例をあげます。
一つ目は過去のブログでも触れられている、LEADについて。中身は別のブログ等を見て頂くとして、まとめると、これはすべてのカリキュラムの一番初めに全員が受けるプログラムですが、このプログラムを通じ、自分がどういったリーダーシップタイプなのか、チームの中でどのような役割が得意かというものを客観的に洞察し、今後2年間のプログラムにおけるソフト面における各時の課題、目標を明確にするためのプログラムと言えます。私のリーダーシップの取り方は、Facilitatorタイプでした。これを土台に、海外でチームを自ら率いる、まとめるという経験において、時に自らの主張をFacilitateしながら伝えるということ以外の観点から相手に分かってもらうことの有効さや難しさ、相手によって使い分けるやり方を、その後の経験でより実感しながら学んでくることができたのではないかと感じます。
次に、シカゴブースにおけるリーダーシップを取る役割の「数」について。大学においては、Student Groupや様々なコンペ、カンファレンス等を通じて、恐らく一学年の学生全体の約600人全員がその大きな役割を取る「機会」が提供されており、大学側もそういった役割を各自が取れるような機会を提供する、という明確なスタンスを持っているように感じます。つまり、自ら飛び込めはいくらでもそういった機会はあるということですね。
最後に講義について。関連する授業は色々とありますが、私が受けたJohn Paul Rollert教授のBusiness Ethicsという授業。最初の導入は、「CommunismはCommunism自体に問題があるが、CapitalismはCapitalistが問題だ」、という主張に対するディスカッションから始まり、講義を通じてCapitalismはIdeologyかSystemか、という問いに対し、自分なりの考えを整理するための材料が提供されます。資本主義の始まりに位置づけられるアダムスミス等の西洋思想史からはじまりベンジャミンフランクリン、カーネギー、ビルゲイツ、グリーンスパン、名前はあげませんが世界一の外資金融会社の社長、会長のストーリ等まで幅広く取り上げられ、過去から現在における思想の展開をたどりながら、本当に難しい決断を迫られる際に重要となる、各自のBusiness Ethicsとは何かをそれぞれが追求し続けるための講義です。個人的に、日本人から見たアメリカ人の反応や根本の思想が垣間見えて面白かったというのはありますが、それは別として、改めて過去の歴史、現在の大物から様々な英知、哲学を学びながら、アカデミックにそれを洞察し、その法則を自分の置かれた環境に置き換え思考する日々はなかなか刺激的で、リーダーシップの深い根本に位置する各自の哲学がより整理されていったのではないかと思います。このような講義、ディスカッション形式を通じたLeadership教育は他にもたくさんあります。