2020 Winter Quarter 授業の履修状況

皆さん、こんにちは。Class of 2021のT.KとY.Tです。

恒例となりました、冬学期の授業の履修状況について2学年合わせてお伝えします。先ず1年生の場合は、多くが秋学期にFoundationsを取り揃えたため、冬学期からはそれぞれの希望に従った授業を取り始めている傾向がありますが、特に、準必修にあたるFunctionsの履修が多くなっています。一方で、2年生の場合は、Electivesや、Foundations, Functionsの上級レベルのクラスを中心に、それぞれが思い思いの授業を履修していることが見て取れます。

1年生の履修状況

2020+winter+class+1Ys-1.jpg

2年生の履修状況

2020+winter+class+2Ys-1.jpg

このうち、いくつかの授業について詳細を各履修者に記載してもらいました。

Financial Econometrics

金融に係る時系列分析に特化した授業であり、高校時代を最後に全く統計を手にしていない私にでも追いつけるよう教授から丁寧に教えて貰えます。週に3時間の授業に加えて、PhDが2時間のReview Sessionを設けてくれるのでコスパはとても良いと考えています。(冗談です)

内容としては、過去データに基づきモノの価格及びボラティリティを予測することに特化しています。主にARMA、ARCH (GARCH含む), VAR(ECM含む)を学びます。特に、以下の通りVolatilityを予測するARCH及び、複数の因子の関係を併せて分析できるVARはとても強力である為、学び甲斐があります。

  • ARCH事態は単純なモデルでありますが、様々な因子を追加して行くことでかなり予測度が高いモデルが出来上がります。特にTARCH等は様々な応用が可能となります。

  • VARは各国中央銀行でのGDP成長率や著名なHigh Frequency Quant Fundの予測モデルに使用されていることもあり、実務上も役に立つと考えています。Bid/AskのHigh Frequency 価格をベースに様々な因子(ボラティリティ・取引数量・市場の厚み)を上乗せすることでBid/Ask Spread取引に活かせるという実際の取引用モデルを作り上げたりします。

自分で作り上げたモデルの確認及び注意事項等も教わる為、既存の金融商品(株・債券・コモディティ)以外の分析にも応用できる力が身に就くと個人的には感じています。(Class of 2020 L.M.)

(注)

ARMA = Autoregressive Moving Average Model

ARCH = Autoregressive Conditional Heteroskedasticity: GARCHのGはGeneralized; TARCHのTはThreshold

VAR = Vector Autoregression

ECM = Error Correction Model

Quantitative Portfolio Management

αを追求する授業です。カッコよく書いてみましたが、モノの価格がどの様な要因でMarketをOutperformしているか教えて貰える授業です。金融に詳しい方にはFactor TradingやFama-French 5-factorモデル等を学ぶと言えば通じるのかもしれません。残念ながら流動性の高い「株・債券」ではOutperformする要因(Factor)は既に市場全体に知れ渡っている為、特に利益が出るようには個人的には思えません。米国では各Factorに合わせたETFも出回っている為、Hedge Fundに投資できない個人投資家でも(MBA取得するより遥かに安い手数料で)Factor Exposureは得られる状態です。結論からするとαはもう世界に存在しない様に思えますが...そうでもないです。

流動性が低いPEやコモディティ等において同じ考え方を用いてトレーディングを行っているファンドも出てきており、商売においてFactorを学んでおいて損はないと感じてます。Mutual Fund/Hedge Fund志望の方は必要不可欠ですが、PE/コモディティ商売に係る方にも是非受講して頂きたい授業の一つです。更に、Ralph Koijen教授も流動性がない他アセットクラスに関する研究を進めている為、いつでも相談に乗ってくれます。(Class of 2020 L.M.)

Digital and Algorithmic Marketing

デジタルマーケティングの領域で、アルゴリズムを活用した意思決定の仕方を学ぶ授業です。Targeting, Recommendation Systems, Content Optimization, Dynamic Pricingなどのテーマを毎週一つずつ消化していきますが、題材事例の多くが教授が過去に関与した企業やプロジェクト(Verizon, Eli Lilly, Sprint, Ziprecruiterなど)からとられており、データ解析の力をどう使って顧客企業の利益を伸ばすのかのプロセスが教授の実体験をもとに紹介されるなど、実践志向の強い授業内容です。機械学習の代表的なアルゴリズムは一通りさらっと触れられますが、アルゴリズムは意思決定のためのツールに過ぎないと位置づけられているため、コーディングなどのウェイトは低く、むしろ仮説構築や消費者購買行動のモデル化など、マーケターとして必要な意思決定スキルを磨くことに軸足が置かれています。このアプローチは、一つ一つのデジタルマーケティング手法やツールのほとんどは数年後には陳腐化してしまうという教授の考え方の裏返しであり、比較的新しい授業ながらDisciplined-Based Approachを重視するBoothらしい授業だと感じます。なお、この授業で学んだ内容を実地で試したいという学生向けに、Algorithmic Marketing Lab(Lab = 企業からの案件を基にしたプロジェクト型授業)も次学期に連続開講されています。(Class of 2020 J.Y.)

Merger & Acquisition Strategy

M&Aにおけるターゲットの選定・ディールの実行・実行後のインテグレーションにおける戦略のキーポイントを学ぶ授業です。題材自体は普遍的なものですが、実はBoothの全授業の中でも一・二を争う人気の授業となっています(履修に必要なポイントで換算)。

この授業の大きな特徴は、理論とケーススタディを非常にうまく組み合わせている事です。理論に関しては、M&Aの目的(Scaleの拡大 / Scopeの拡大 / Capabilityの取得)に始まり、ターゲットの業種の絞り込み、インテグレーションの度合い(Fully Integrate / Partially Integrate / Keep separate)といった多方面の課題について、実証研究に裏打ちされ、また実際に戦略コンサルティングファーム等で用いられているフレームワークを多数紹介します。次にケーススタディの段階では、これらの理論を現実世界に応用すべく、過去に行われたディールに関する資料を分析し、授業でディスカッションをするという形式が取られています。また最終プロジェクトでは、4-5人のチームで一つの企業を選択し、授業で学習したフレームワークを用いながら、その企業におけるM&Aのターゲット企業の選定・インテグレーションの戦略等に関する提言を行います。

この授業のスタイルは、複雑な事象を解明するためのフレームワークを学び、分析力を養い、現実の問題解決に結びつけるというという意味で、Chicago Approach (こちらをご参照ください)をうまく体現していると思います。(Class of 2020 T.H.)


The Study of Behavioral Economics

経済学と心理学を融合した行動経済学(2017年ノーベル経済学賞のRichard Thaler<Booth教授>が有名)の考え方やビジネス・政策への示唆について幅広く学ぶ人気授業です。Boothには所謂Behavioral系の授業が他にも多くありますが、この授業は特に学術研究の紹介に重点を置いており、毎回の予習課題では学術論文を読みます。一方、当授業担当のPope教授は研究の傍らAmazonでアドバイザーも務めるなど実際の企業活動への応用にも明るく、学術研究が企業の問題解決にどのように繋がり、そこから次の学術研究にどのようにFeedbackされていくかという流れを学ぶことができたのが魅力的でした。

授業のスタイルは、その週のテーマに沿った学術研究成果を紹介しながら実際の企業/消費者行動にみられる類似事例を挙げていく講義型です。もっとも、多種多様なバックグラウンドを持つ学生の仕事や生活から得た実体験も引き出しながら進めるInteractiveなもので、終盤には、実際に研究で使われているRandom Sample SurveyのPlatformに載せる質問票を自ら考えるProjectが課され、授業内で実際にSurveyを実施して結果をみるというプロセスを体験できます。単に過去の研究の紹介に留まることなく、日々の仕事や生活において行動経済学的見地から考える習慣を身に着ける良い訓練になったと思います。(Class of 2021 H.M.)

Strategic Leadership in Management Networks

社会的ネットワークによって個人・組織がどのように競争優位性をもつかについて学ぶ授業です。ここでいう社会的ネットワークとは、職場での上司・同僚から、私的な友人・知人まで、個々人がもつあらゆる人的なつながりのことを指します。日本ではあまり馴染みのない分野かもしれませんが、欧米ではネットワークが非常に重視されており、Boothでの人気授業の一つとなっております。教授は次のノーベル経済学賞候補として挙げられているほどの方で、これまでの膨大な実証研究に裏打ちされた理論について、データだけでなく適宜映像教材やケースを交えながら解説していきます。

授業の前半は、まず社会的ネットワークをclosed networkとbrokerに分類するところからスタートし、これらclosed networkとbrokerの特徴や留意点を教授が解説していきます。授業の後半では、ケーススタディを通じてこれまで学んだ理論が実際の会社組織でどのように機能しているかを学んでいきます。また、授業を通じて自分自身の社会的ネットワークについても可視化し、分析を行います。これまで自分自身の社会的ネットワークを体系化された理論に基づいて分析することはなかったため、新たな気づきが多く、大変参考になりました。(Class of 2021 S.N.)