自由度の高い授業環境: 2019 Winter Quarter

皆さん、こんにちは!Class of 2020のH.Mです。

11月にClass of 2020の日本人14人が、2018年Fall Quarterに実際にどのような授業を履修しているかを投稿しました。今回は、2019年Winter Quarterの実際の履修状況をお伝えできればと思います。

以下が履修科目の一覧です。各授業の分類については前回の投稿をご確認ください。

Foundation
Functions, Management, and the Business Environment
Electives
MPCS
Aさん 35201 - Cases in Financial Management 35214 - Debt, Distress, and Restructuring 40000 - Operations Management
Bさん 34101 - Entrepreneurial Finance and Private Equity 35200 - Corporation Finance 37000 - Marketing Strategy 42001 - Competitive Strategy
Cさん 30116 - Accounting and Financial Analysis I 35214 - Debt, Distress, and Restructuring 40000 - Operations Management
Dさん 30001 - Cost Analysis and Internal Controls 30130 - Financial Statement Analysis 40000 - Operations Management 42117 - Platform Competition
Eさん 34304 - Cryptocurrency and Blockchain 35000 - Investments 35214 - Debt, Distress, and Restructuring 38002 - Managerial Decision Making
Fさん 35000 - Investments 37000 - Marketing Strategy 40101 - Supply Chain Strategy and Practice
Gさん 30116 - Accounting and Financial Analysis I 34101 - Entrepreneurial Finance and Private Equity 35000 - Investments
Hさん 34101 - Entrepreneurial Finance and Private Equity 36110 - Application Development 41100 - Applied Regression Analysis 52011 - Introduction to Computer Systems
Iさん 38001 - Managing in Organizations 42001 - Competitive Strategy 42108 - Corporate Governance
Jさん 34110 - Social Enterprise Lab 35000 - Investments 40000 - Operations Management
Kさん 30121 - Accounting for Entrepreneurship 33040 - Macroeconomics 33503 - Managing the Firm in the Global Economy 35000 - Investments
Lさん 33040 - Macroeconomics 34722 - Scaling Social Innovation Search Lab 35000 - Investments 38001 - Managing in Organizations
Mさん 34302 - Entrepreneurship through Acquisition 38001 - Managing in Organizations 38103 - Strategies and Processes of Negotiation 41100 - Applied Regression Analysis 55001 - Algorithms
Nさん 33040 - Macroeconomics 34103 - Building the New Venture 41100 - Applied Regression Analysis 42117 - Platform Competition

いかがでしょうか?Fall Quarterでは、Foundationの授業履修が多かったですが、今学期は皆、FoundationからElectieveに至るまで多様な授業を履修しており、まさにBoothのFlexibilityの高いカリキュラムを存分に活かした形になっているかと思います。(先学期同様、同じ科目名の授業でも、どの時間帯の授業を履修するかは自由です。)


1年生のうちから様々なElective授業を履修できるのが一番の特徴と思います。実際の履修者にElectiveがどのような授業なのかを紹介してもらいましょう。

Debt, Distress, and Restructuring

Corporate Financeの分野の上級クラスの一つで、企業のCapital StructureとDistress投資の二つを主に扱います。Capital Structureのセクションでは、Capital Structureは企業価値に影響を与えないというMM理論の限界を説き、Capital Structureがどうキャッシュフローに影響してくるか、最適なCapital Structureどうあるべきかについて学びます。例えばLBOにおいて、Tangibleな資産をSPCに移して倒産隔離を測り、ABSによる資金調達を行うことでどれほど利率を下げられるかを計算する等、かなり細かい実務面に踏み込んでいる印象です。Distress投資のセクションではハイイールド債への投資から、経営破綻寸前の企業のバイアウトのケースまで幅広く扱い、Credit Default Swapの仕組みやChapter 11の申請を一通り教えた後、最後に各グループでDistress投資のピッチをつくり発表するという内容になっています。どちらのセクションもハイレベルな内容で、教授やプログラムを提供可能という観点、学生側のニーズが高いという観点で、金融に強いBoothならでは授業ではないかと思います。(Class of 2020 R.I)

Social Enterprise Lab

Social Impactにフォーカスした、Labコース(実在企業などの問題解決に取り組むプロジェクト型授業)の一つです。クライアントは、伝統的なnonprofit(非営利組織)だけでなく、社会的課題の解決をミッションとするfor-profit(営利企業)まで含まれます。私のケースでは、中小企業やNPOにフォーカスした40名規模のコンサルティングファーム(for-profit)がクライアントで、幅広い中小企業・NPOにリーチするための新規サービス開発 / 市場リサーチに5人のチームで取り組んでいます。中小企業やNPOへの個別コンサルは、採算化が難しく、事業をスケールさせていくにも限界があるので、行政・財団・投資家・銀行・大企業などのエコシステムレベルの組織を直接的なターゲットとして、彼らを通じた中小企業・NPO向けのサービスやプログラムを作っていくのが基本的な方向性です。秘密保持のため詳述は控えますが、クライアントが温めた複数のコンセプトに対して、潜在顧客・パートナー・業界専門家などへのインタビューやアンケートなどを通してマーケット調査を行い、ビジネスケースを立案するところまでが責任範囲です。このLabコースには、Social Impact業界への就職に本格的に取り組んでいる人から、好奇心ベースで受講している人まで参加の動機は様々であり、Harris(シカゴ大学公共政策大学院)からの参加者も多いので、様々なバックグラウンドの人が集まるのも特徴の一つです。業界経験の豊富なコーチ(メンター)が各チームに付き、教授と合わせてプロジェクトの進行をサポートしてくれるので、彼らのアドバイスやフィードバックが非常に有益だと感じています。(Class of 2020 J.Y.)


Accounting for Entrepreneurship

設立からIPOに至るまでのStartupの成長過程において、CFOとして必要になる知識を習得する授業です。Accountingと名がついていますが、会計よりもStartup特有の財務戦略をメインに扱います。トピックとしては、Common stockとPreferred Stockの違い、Cap tableの構築とOption poolの設定、会社形態(LLC, C-Corpなど)の違いによる税務上の長所・短所、Founder間の株式分配、役員・従業員報酬(Stock optionなど)の配分、VC・社債・IPOによる資金調達などを取り扱います。教授(Ira Weiss)はAngel投資家やソフトウェア開発企業のBoard Memberとしての実務経験もあることから、実在企業の事例などを多く交えて講義が構成されています。また、税務戦略の専門家(Taxes and Business Strategyという別講座も担当)でもあることから、Startup特有の税制優遇や会計処理などについても扱います。(Class of 2020 T.K.)

授業の履修については、今後もお伝えできればと思います。

Marketing Trek 2018

Class of 2020のKです。昨年12月にMarketing Trekに参加しましたので、その内容をレポートします。

 そもそもTrekとは何か?他にどのようなTrekがあるのか?については、過去のポスト(Tech Trek 2017レポートHealthcare Trek)をご覧ください。

 Marketing TrekはMarketingというFunctionを軸とした企業訪問旅行です。今回の参加者は8人で、Seattleにて4社(MicrosoftAmazonBoeingStarbucks)、San Franciscoにて6社(SalesforcePremier NutritionLinkedInGoogleOld Navy(GAP)、Lyft)を訪問しました。各企業ではBoothアラムナイを中心とした社員の方の話を伺ったり、工場見学をさせていただいたりなどしました。

 この種のTrekは就活目的で参加する人が多いのですが、このMarketing Trekは、就活とは無関係に純粋にMarketingに興味を持っている人(私含む)も参加しており、もちろん真剣でありながらflexibleな、とても雰囲気の良いTrekでした!

 以下、特に印象に残った企業についての感想です。

 

·       Microsoft

 BoothアラムナイのSatya NadellaがCEOになりもたらした変化についての話題が面白かったです。Hardwareも扱っているので、開発中の製品や3Dプリンター等も見せてもらいました。

 

·       Amazon

 決済分野等の新しい事業も含め、世界中の日常生活にますます浸透してきているという印象を受けました。2018年にオープンしたばかりのSpheres(ワークスペース)や、Amazon Goを訪問することができて良かったです。ペットを連れてきている社員の方が多いことも印象的でした。

·       Boeing

 B-to-B Marketingの奥深さを知ることができ、今回の旅のbest momentだったかなと思います。まずは最新型の機内のモデルを見せてもらい、seat designや照明の工夫など、最高のflightを提供するための企業努力を知りました。また、顧客であるAirlineに対して実際にどのようにセールスを行っているのかを実演してもらい、例えば競合他社がより低い価格で航空機を売っているわけですが、耐用年数を踏まえるとコスト面の優位性もアピールできるなど、売り込み方によって商品価値を高めていけるということを学びました。

 

·       Starbucks

 世界各国に様々なカフェ・ドリンク文化がある中で、市場に浸透して行くための工夫が興味深かったです。カフェ店舗がスタバの象徴である中で、販売チャネルの多様化も印象的でした。コーヒーや紅茶の試飲もさせてもらいました。

 

 ·       Google

 パネルの皆さんがGoogliness(日本語ではGoogle人らしさ、でしょうか)についてしきりに語っていたのが印象的でした。社員の皆さんのjob functionも非常に幅広く、結果として個別の事業について突っ込んだ話はできず。大企業だなと思いました。

 

·       Old Navy

 安心感の裏にある顧客獲得・維持のための工夫が面白かったです。変わらぬ魅力を提供するためには、組織内部は現状維持ではいけないと思い知らされました。

 

·       Lyft

 Ride Shareという新しい業態のため、それぞれの社員がentrepreneurshipを持つことで急成長を実現しているようでした。パネルの方がchallengeもopportunityも多くexcitingだ、と言っていたのが印象に残っています。訪問したのがクリスマス前の金曜だったためオフィスにはほとんど人がおらず、働き方の柔軟さも感じました。

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また、訪れた街についての感想も。

 ·       Seattle

 気温はそこまで低くないのですが、ずっと雨が降っていてジメジメしていました。Chicagoは非常に寒いし雪も降りますが、カラッとしているので、良し悪しあるなと感じました。

ただ、働く人に優しい街だなという気がしました。ワシントン州は個人に対して所得税がかからないところが魅力的だと思います。またSeattleは最低賃金が$15/hourで、これを確保するためレストランではチップ込みの値段を請求されることが一般的であるようです。

Seattleで働く日本人のエンジニアの方にも会い、とっても働きやすいよという話を聞きました。日本で消耗している方はぜひSeattleへ。

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·       San Francisco

 中心部は高層ビルが規則正しく立ち並び東京に似た雰囲気を感じました。気候も良いし、アジア料理へのアクセスも良さそうです。ただ大都会ゆえではありますが、街ゆく人の雰囲気から貧富の差を感じる場面が多々あり、歩いてて怖いなーというエリアも結構ありました。

 Trekと関係ないのですが、空き時間に隕石が落ちているところを目撃しました。

·       Mountain View (Google)

 だだっ広い土地に大きなGoogleの本社(ビル複数)がポツポツと建っていました。率直に言えば何もないところだなと思いましたが、駅周辺のレストランなどは充実しており、また更なる開発も予定されているそうです。San Francisco中心部に住む人は片道1時間ほどかけて通勤しているそう。この通勤の時間も自分にとって色々物事を考えるための大切な時間なんだ、と言っていたパネルの方がいました。

 

全体として、各企業のMarketing戦略、働き方、オフィスや街の雰囲気など、訪問したことで得られた情報がたくさんあり、貴重な機会となりました。多くの企業は、一般旅行者としては立ち入ることができず、MBA(Booth)の学生だからこそ訪問を受け入れてくれました。これもMBAのメリットの一つだと思います。Boothが西海岸の企業やMarketingに強いというイメージはあまりなかったのですが、実際に訪れてみると、どの企業にもたくさんのアラムナイがいて驚きました。受験生の方もぜひ、先入観にとらわれずBoothのリソースの豊富さを知っていただければと思います。

 同級生との交流を深められたこともとても良かったです。少人数だったので全員と深い話ができ、食事や観光も一緒に楽しみました。このうち4人とはAirbnbで一緒に滞在し、夜中までNetflixを見たりして盛り上がりました。

Trek Leaderは企業へのアポイントや交通手段の確保等、とても気を配ってくれました。私は同級生でありながら、いち参加者として恩恵を得てばかりで申し訳ないなという気持ちになりましたが、Trek Leaderは ”My pleasure. This is work of love” と言っていました(器が大きい!)。Boothはpay it forwardの精神を大切にしているcollaborativeな校風で、私もエッセイではちゃんとcontributeするよーと書きましたが、優秀な同級生たちの中で付加価値を提供するのは実際のところ簡単ではないなと感じます(貢献できていなくても優しくサポートしてくれる同級生ばかりです、本当に)。授業料払ってるからいいんだと言ってしまえばそれまでですが、どこか足りない、貢献できていないという気持ちを今後の自分の成長に繋げていけたらと思います。

 

以上、Marketing Trek 2018レポートでした!

 

家族帯同 @ Chicago

こんにちは、Class of 2020のT.K.です。

今回はアカデミックな話題ではなく、家族帯同でChicagoに来る可能性がある方向けに子供を連れて楽しめる場所を中心に居住エリア周辺にある様々な施設を紹介させていただきます(もちろん大人の方だけでも楽しめます)。

 私自身は妻と子供二人(渡米時点で4歳の長男と生後2ヶ月の次男)と一緒にChicagoに移り住んできましたが、自分が学業に集中するためには、家族が現地の生活をエンジョイすることが非常に重要だと実感しました。そういう観点ではChicagoには大都市ならではの豊富なオポチュニティがあり、大変助かってます。

 ①    Chicago Children's Museum (Navy Pier内)

居住エリアから徒歩20分程度のところにあるNavy Pierという複合商業施設の中にある子供向け博物館です。幼児から小学生まで各年齢に合わせた遊び場があり、見たり、触ったり、走り回ったりして一日中楽しめます。また、Navy Pierには大きなフードコートや観覧車などの乗り物もあるので、博物館を出たあとも楽しめる場所がたくさんあります。ちなみに毎週木曜日の夕方と毎月第一日曜日は博物館の入場が無料です。

URL: https://www.chicagochildrensmuseum.org/

 

②    Shedd Aquarium

居住エリアから徒歩30分程度(車だと10分程度)のところにある、シカゴ最大の水族館です。32,000(1,500種)を超える海洋生物を有しており、敷地も相当広く、日本でも同規模以上の水族館は数えるほどかと思います。世界中の海洋生物が展示されており、生息地域別に展示エリアが分かれており、見どころ満載です。ちなみに、シカゴ市民は常に入場料が半額になるうえ(図書館カード、免許証、郵便物などによる証明が必要)、イリノイ州民の入場料が無料になる日も設定されています。

URL: https://www.sheddaquarium.org/

 

③    Field Museum

Shedd Aquariumに隣接しており、恐竜の化石、動植物の剥製、昔の人の暮らしの風景などが展示されています。中でも一番有名なのが、世界で最も完全に近いT.REXの全体標本であるSue(愛称)の展示です。やや大人向けの展示が多いため、子供連れの場合は小学生以上の方が楽しめるかもしれません。

URL: https://www.fieldmuseum.org/

 

④    Maggie Daley Park

観光名所として有名なMillennium Parkに隣接する公園で、巨大な屋外遊具(無料)があります。居住エリアからは徒歩5分程度ですので、週末にふらりと気軽に遊びに来ることができます。また、冬場にはアイススケートリンクが開設され、入場料は無料です。スケート靴をレンタルする場合は一人一日$15となります。連休中は靴をレンタルするのに長蛇の列ができることもあるので、スポーツ用品店などでスケート靴を購入するのもおすすめです(初心者用だと$60程度で買えますので4回行けば元が取れます)。

URL: https://maggiedaleypark.com/

 

⑤    Lake Shore East Park

住居エリア内にある公園で、滑り台やブランコといった遊具に加えて、広い芝生が広がったエリアもあります。普通の公園ではありますが、最も遊ばせることの多い場所です。公園を囲むようにマンションが立ち並んでおり、Downtownの喧騒とは隔離されているため、非常に安心して子供を遊ばせることができます。また、周囲のマンションにはBooth生以外にも子供連れの日本人家族が複数住んでいるため、子供同士が公園で一緒に遊ぶこともよくあります。冬場は雪遊びやソリ遊びなどが気軽にでき、冬のシカゴを子供と満喫できます。

 

⑥    Lincoln Park Zoo

バスで北に15分程度のところにあるLincoln Parkという公園内にある動物園で、1年を通じて入場料が無料です。無料とは思えないほどの展示の豊富さがあり、巨大な屋内遊具もあるので、子供連れにはうってつけの施設です。カフェテリアや売店なども所々にあるので、手ぶらで来園しても、一日中楽しむことができます。また、冬場には夜間のライトアップや各種イベントなども開催されます。

URL: https://www.lpzoo.org/

 

⑦    Museum of Science and Industry

Chicago大学のメインキャンパス近辺にあり、居住エリアからだとMetra(電車)もしくは車(Uber)での移動となります。名前のとおり、科学関連の展示が中心となっておりますが、目で見て体験できる展示が多く、未就学児でも楽しめるような内容になってます。中にはヒヨコの孵化が見られる展示もあり、ヒヨコが生まれる瞬間を常時見ることができます。常設展だけでも、全てを1日で見るには難しいほどの量があり、充実した内容となっております。なお、当博物館もシカゴ市民の入場料割引とイリノイ州民のFree dayが設定されています。

URL: https://www.msichicago.org/

 

これらの場所は、勉強に疲れたときに御家族を連れて息抜きをするにも良いですし、グループワークや授業の課題などで家を空けるときに御家族に楽しんでもらうにも良いですし、他の家族と一緒にいっても楽しいと思います。また、今回ご紹介した施設以外にもたくさんの遊び場がありますので、Chicagoにお越しの際は、是非、散策していただければと思います。

Finance Classes @ Booth

2年生のざきやまです。

 

私はBooth入学前に投資銀行でフィナンシャル・アドバイザー(FA)業務を行っていたのですが、当時からコーポレート・ファイナンス理論やコーポレート・バリュエーションに大きな関心がありました。

当時は仕事の傍ら専門書を読み漁ったり、同様の関心を持つ先輩バンカーと議論したりしながら、FA業務を行っておりました。

 

そんな中、市場では「マイナス金利政策」や「HFTやアルゴリズム・トレーディングの普及」等の大きな変化が起こり、CAPM等の従来の伝統的な投資銀行のアプローチに単に従って業務を行っているだけでは本質的なアドバイスを行う事は難しくなってきたと認識しました。従って、①専門書に掲載されているHow toで対応するには限界がある為、コーポレート・ファイナンスやバリュエーションの根幹(What)までをしっかりと理解し、その上で、然るべき前提を柔軟に変更して、ケースバイケースにおける本質的なアプローチが出来るFAが必要とされると考えました。

加えて、②従来の成熟大企業を対象としたコーポレート・ファイナンス/バリュエーション理論に加えて、スタートアップやVCの普及に伴い、アーリーステージの企業に対するアプローチや、プライベート・エクイティの発展に伴った、中小企業へのアプローチも、特性として認識する必要があると思いました。

 

Chicago Boothはその双方を満たす授業を提供しております。

 

①に関しては、例えばユージン・ファーマ教授(2013年ノーベル経済学賞受賞)のPortfolio Choice and Asset Pricingという授業があります。基本的にファーマ教授の著書及び論文を読み(毎週5本程度読みます)、それを基にクラスで議論をするという形態です。ファイナンスに詳しい方はご存知かと思いますが、ファーマ教授はCAPMで説明のつかないアノマリーに対して、スリー・ファクター・モデル(株式のリターンは市場リターン、時価総額、PBRの逆数の3つのファクターと相関があるというモデル)というアプローチを開発した方です。著名人なのでさぞかし頑固かと思いきや、小生なんかのモデル前提に対する指摘に対してもあっさりと非を認め、なぜその前提を選択したのか、その副作用として他の前提を犠牲にしたのかをしっかりと説明してくれました(私の指摘は、ファーマ・マクベス回帰において2段階目の回帰アプローチ時βが高い順にグループ化して回帰分析する事により、意図的に標準誤差を調整しているのではないか?という指摘でした)。本授業は、MBA生向けであるものの、PhDレベルの授業という事で、月曜と水曜に週2回授業があるのですが、毎週水曜にTake Home Exam、隔週月曜にデータ分析を用いたProblem Setの提出が求められる為、時間的コミットメントの大きい授業となります。

 

②に関しては、2つの軸(会社のステージと、誰にとっての視点か)に基づき、複数の授業がオファーされております。例えば会社のステージがスタートアップであり、視点が株主ということであれば、Venture Capital LabやCommercializing Innovationという授業がオファーされておりますし、視点が経営者ということであれば、Entrepreneur DiscoveryやBuilding a New Ventureという授業がオファーされております。会社のステージが成熟期で視点が投資家であればPrivate Equity LabやEntrepreneur Finance and Private Equityという授業が、会社のステージが衰退期であれば、Debt, Distress and Restructuringという授業がオファーされております。Labの授業に関しては、授業外にシカゴ地区でのPrivate Equity若しくはVenture Capitalでのインターンシップ(週2以上)が求められる為、アカデミックと実務の両輪で学びを得る事が出来ます。また、アントレ系の授業では、起業家で自身の企業を複数回IPOしたMark TebbeやScott Meadowの様な実務出身の教授がマーケットプラクティスに基づいた学びを与えてくれます。この実務とアカデミックの両立が卒業後のバリュープロポジションとなる事は間違いありません。

 

Boothは、ビジネス環境の変化に柔軟に対応し、アントレプレナーシップ、マーケティング、ソーシャルインパクトといった強力な軸を持った学校へと変貌を遂げているものの、圧倒的なファイナンスの強みというのは引き続き健在であり、ビジネススクールでありながら、Master of FinanceやPhDを凌駕するような、無限の成長機会が用意されています。ファイナンス・マニアの方にはこれ以上の環境は存在し得ないと思います。

ファイナンス界のレジェンド ユージン・ファーマ教授(2005年ノーベル経済学賞受賞)

ファイナンス界のレジェンド ユージン・ファーマ教授(2005年ノーベル経済学賞受賞)

Case Competitions

こんにちは、Class of 2020のR.Iです。

Boothでは、日々のクラス以外にも様々な機会があり、その多さに目が回る日々です。今回はそんなクラス外の機会の一つとしてケースコンペ(Case Competition)をご紹介します。ケースコンペは、様々なテーマ(Consulting, Investment Management, Venture Capital, Private Equity, Healthcare, Tech, Design等)に沿って、与えられたテーマに対する提案・プレゼンテーションをグループで行うイベントです。授業での学びをより深めるだけでなく、多くのゲスト審査員・学生の前でプレゼンテーションを行ったり、グループワークを進めたりする中での実践的な学びも魅力の一つです。日本人学生も各種ケースコンペにて活躍しておりますので、いくつか具体例を紹介させて頂きたいと思います。

1. Oxford Chicago Global Private Equity Challenge (Class of 2020 R.I)
BoothにはPolsky CenterというEntrepreneurship・Private Equity・Venture Capitalの分野における就活支援や各種プログラム企画を行っている機関があります。このPolsky CenterとOxford Said Business Schoolとの共催で、両校の参加学生チームがPrivate Equityによる買収ケースに取り組むのが、Oxford Chicago Global Private Equity Challengeです。
概要としては、5人ずつ学生のグループを作り(昨年はBooth側で20チーム以上参加)、2週間程の期間の中で25ページのプレゼン資料とフィナンシャルモデルを提出。その中で6チームがInterview Roundに選ばれ、シカゴにあるPEファームのパートナーの前で発表。その後3チームがSemifinal Roundに選ばれ、大教室でパートナー・Booth生の前で発表。最後に1チームがFinal Roundに選ばれ、Oxfordの代表チームとプレゼン対決という内容になっています。(場所は毎年BoothとOxfordで交互に開催)
お題は、Polskyが選んだ270社程度の上場企業のリストを与えられ、LBO投資に最適な買収対象企業を1社選ぶところから始まり、業界・対象事業分析、過去の財務分析、将来のビジネスプラン、バリュエーション、キャピタルストラクチャー、買収後の100日プラン、リターン分析、今後のDD項目、とバイアウト投資に係る全てを網羅する提案をせよというもの。私のチームはPE、コンサル、投資銀行、FAS、エンジニアというバランス取れたチームで臨め、Interview Roundにまで残ることができたものの、そこで残念ながら敗退という結果になりました。
終えた感想としては非常に学びが大きく満足しており、また幾つか気づきもありました。まず1点目に、PEという然程大きくない業界に対するBoothで活用できるリソースの広さです。PEバックグランドのチームメイト、過去のコンペ資料、シカゴのPEのパートナーからのQA・フィードバック等、あらゆる点から学びを深め、結果としてアウトプットのレベルを高めることが出来たと感じました。2点目に、チームを動かす難しさです。5人がフラットなチームで、全員のバックグランドがばらばらとなると、ミーティングや作業の進め方へのイメージの齟齬、専門用語への理解度の差と様々なとこで、スムーズにいかない壁がありました。この状況下でどうコミュニケーションを取るかが難しく、一方でMBAだからこそ鍛えられるスキルであるなと感じました。
中間試験のための勉強時間や睡眠時間等、犠牲にしたものもありましたが、とても充実した2週間となりました。

2. ABI Corporate Restructuring Competition (Class of 2020 J.Y)
ABI (American Bankruptcy Institute) 主催の事業再生系のケースコンペです。BoothにはCREDIT (The Credit Restructuring Distressed Investing and Turnaround Group) と言う、Distressed Investing(ハイイールド債などの高リスク債券への投資)や事業再生の分野を扱うクラブがあり、ケースコンペへの参加の意思表示をするとクラブ側によって1組4名のチーム組成を受けて、そのメンバーで参加しました(私以外の3名は金融バックグラウンドのアメリカ人)。
内容は、Chapter11(日本の民事再生法に類似)に申請した住居用窓の製造業者のケース課題が与えられ、当該企業のアドバイザーとして再生計画を策定し、利害関係者との交渉を行うというものです。具体的には、20ページ程度の事業再生計画書を主催者側に事前提出し、コンペ当日は、(1)債権者集会、(2)取締役会へのプレゼンテーション(各40分)を実施し、さらに上位3チームには、(3)破産裁判所へのプレゼンテーション(45分)が課せられ、再生計画の承認を取り付けるのがゴールとなります。
チームメンバー4名の中に事業再生分野に格別詳しい人間は(私含めて)いませんでしたが、Boothのクラブ側が初学者向けにトレーニングセッションを組んでくれ、Chapter11に関連する基礎的な用語解説から、実際の申請プロセスや各ステークホルダーの利害構図などをカバーすることができ、初学者でもチャレンジし易い環境を整えてくれました。課題発表から本番までの1週間は毎晩遅くまでチームメンバーと作業に当たりましたが、作業に詰まった時には、アルムナイネットワークを活かして、AlixPartners(事業再生系の経営コンサルティング会社)のBooth卒業生とランチミーティングをし、より現場の肌感覚に近い部分での一般的なアドバイスを得たりして、再生計画書の質を高めることに役立てました。
プレゼンの場では、Bankruptcy Court(破産裁判所)の現役裁判官に加えて、再生系コンサル、弁護士などの業界人が多数審査員として参加していました。彼らは、緊迫した雰囲気を演出してくれるだけでなく、各プレゼン終了後には内容からプレゼン技法に至るまで詳細なフィードバックを実施してくれ、その点は非常に学びの多いものでした。
結果は出場8チーム中2位と、惜しくも優勝は逃しましたが、他チームは事業再生分野出身者や弁護士など専門知識を備えたメンバーが多かった中で、大健闘だったと思います。
個人的には、英語力や業界知識が充分備わっていないことへの不安から、入学初期の段階でケースコンペティションに参加すること自体、相当な躊躇いがありました。ただ、実際に参加してみると、こちらが発信する意見を皆がしっかり受け止めてくれる雰囲気があり、かつBoothの持つ様々なリソースへのアクセスにより足りない知識を補うことも出来たので、「日常では経験できない本気度で、周りのメンバーと一緒になって課題解決に取り組む」という充実した経験を得ることができ、背伸びしてチャレンジして良かったと思いました。こうした未経験者であってもチャレンジし易く、かつ一定のレベルの成果を出し切るための環境が整っているのはBoothの良さの一つだと思います。

3. National Energy Finance Challenge (Class of 2020 福島)
National Energy Finance Challngeは、エネルギービジネスへ注力したプログラムが特徴であるThe University of Texas at Austin - McCombs School of Business主催のエネルギー・ファイナンスのケースコンペです。スポンサーには、石油メジャーであるExxonMoilやChevron、金融機関Wells Fargo、Lazardといった会社が名を連ねております。本ケースコンペは学校対抗となっており、各学校4,5人でチームを編成し参加します。木曜日の夕方お題が発表され、日曜の夜にプレゼンを提出、翌金曜日にオースティンにあるMcCombsでプレゼン発表が行われるというスケジュールになります。
今回のお題は、アメリカの石油企業の上流事業(油田への投資)と下流事業(ガソリンスタンド)のメキシコ市場参入のための戦略を策定するというものでした。具体的には、①上流:与えられた5つのメキシコの油田の投資採算性を評価、入札パートナーを選定し、入札対象の油田及び価格を提示する、②下流:メキシコのガソリン市場への参入において、ガソリンスタンドの自社運営、販売代理店との契約、ブランド供与によるライセンスビジネスの3つの形態の採算性を評価し、メキシコ市場参入戦略を策定する、というものでした。
私のチームは、アメリカ人(エネルギー業界エンジニア)、チリ人 x 2(PE, Consulting)、メキシコ人(PE)、そして私(エネルギー業界事業開発)という異なる経歴、国籍を持つチームでした。エネルギー業界出身である2人を含め、誰も今回のお題に直結する経験は持っておりませんでしたが、コンサル出身者がプレゼン全体のストーリー策定、エネルギー業界出身の2人がケース内容を咀嚼・伝達、それを元にPE出身の2人が財務モデリングを行うという形で、それぞれの強み・特徴を活かしてお題に取り組むことが出来ました。日曜日にプレゼンを提出後、金曜日の本番までプレゼンの練習もしっかりして臨みましたが、残念ながら1回戦を勝ち進むことは出来ませんした(2回戦が決勝)。
残念な結果ではありましたが、MBAではHands onの経験に重点を置きたい私としては、チームで働く上での学びが得られた点は非常に良かったです。一つは上にも記載しましたが、異なるバックグラウンドのメンバーが集まることで、より良いアウトプットが出せることを実際に体験した点です。コンサル・PE出身者がどのようなスキルを持っているのかをこの目で見れたことは非常に勉強になりました。一方で、多国籍かつフラットな関係のチームの中で働くことの難しさも感じました。上下関係がないため、合意ベースで議論は進んで行き、議論についていけないと自分のアイディアを取り入れることが出来ません。全体の議論がずれている時の修正や自分のアイディアを売り込む力はもっと改善していかなければいけないと思いました。
多くの学びがありましたが、本ケースコンペに参加して一番良かったのは仲の良い友達が出来たことです。チームを結成した際にはみんなでドイツビールをたらふく飲み親睦を深め、宿題や授業に忙しい中、週末に多くの時間を割きお題に取り組み、オースティンでは5人で一緒のAir B&Bに泊まり、ケースコンペ終了後は有名店でBBQを食べ、夜中まで飲み歩くなど、非常に濃厚な時間を過ごすことが出来ました。短期間ではありますが、苦楽を共にして仲を深めた友人は、MBA 2年間および卒業後においても貴重な財産だと思います。