2年生のざきやまです。
私はBooth入学前に投資銀行でフィナンシャル・アドバイザー(FA)業務を行っていたのですが、当時からコーポレート・ファイナンス理論やコーポレート・バリュエーションに大きな関心がありました。
当時は仕事の傍ら専門書を読み漁ったり、同様の関心を持つ先輩バンカーと議論したりしながら、FA業務を行っておりました。
そんな中、市場では「マイナス金利政策」や「HFTやアルゴリズム・トレーディングの普及」等の大きな変化が起こり、CAPM等の従来の伝統的な投資銀行のアプローチに単に従って業務を行っているだけでは本質的なアドバイスを行う事は難しくなってきたと認識しました。従って、①専門書に掲載されているHow toで対応するには限界がある為、コーポレート・ファイナンスやバリュエーションの根幹(What)までをしっかりと理解し、その上で、然るべき前提を柔軟に変更して、ケースバイケースにおける本質的なアプローチが出来るFAが必要とされると考えました。
加えて、②従来の成熟大企業を対象としたコーポレート・ファイナンス/バリュエーション理論に加えて、スタートアップやVCの普及に伴い、アーリーステージの企業に対するアプローチや、プライベート・エクイティの発展に伴った、中小企業へのアプローチも、特性として認識する必要があると思いました。
Chicago Boothはその双方を満たす授業を提供しております。
①に関しては、例えばユージン・ファーマ教授(2013年ノーベル経済学賞受賞)のPortfolio Choice and Asset Pricingという授業があります。基本的にファーマ教授の著書及び論文を読み(毎週5本程度読みます)、それを基にクラスで議論をするという形態です。ファイナンスに詳しい方はご存知かと思いますが、ファーマ教授はCAPMで説明のつかないアノマリーに対して、スリー・ファクター・モデル(株式のリターンは市場リターン、時価総額、PBRの逆数の3つのファクターと相関があるというモデル)というアプローチを開発した方です。著名人なのでさぞかし頑固かと思いきや、小生なんかのモデル前提に対する指摘に対してもあっさりと非を認め、なぜその前提を選択したのか、その副作用として他の前提を犠牲にしたのかをしっかりと説明してくれました(私の指摘は、ファーマ・マクベス回帰において2段階目の回帰アプローチ時βが高い順にグループ化して回帰分析する事により、意図的に標準誤差を調整しているのではないか?という指摘でした)。本授業は、MBA生向けであるものの、PhDレベルの授業という事で、月曜と水曜に週2回授業があるのですが、毎週水曜にTake Home Exam、隔週月曜にデータ分析を用いたProblem Setの提出が求められる為、時間的コミットメントの大きい授業となります。
②に関しては、2つの軸(会社のステージと、誰にとっての視点か)に基づき、複数の授業がオファーされております。例えば会社のステージがスタートアップであり、視点が株主ということであれば、Venture Capital LabやCommercializing Innovationという授業がオファーされておりますし、視点が経営者ということであれば、Entrepreneur DiscoveryやBuilding a New Ventureという授業がオファーされております。会社のステージが成熟期で視点が投資家であればPrivate Equity LabやEntrepreneur Finance and Private Equityという授業が、会社のステージが衰退期であれば、Debt, Distress and Restructuringという授業がオファーされております。Labの授業に関しては、授業外にシカゴ地区でのPrivate Equity若しくはVenture Capitalでのインターンシップ(週2以上)が求められる為、アカデミックと実務の両輪で学びを得る事が出来ます。また、アントレ系の授業では、起業家で自身の企業を複数回IPOしたMark TebbeやScott Meadowの様な実務出身の教授がマーケットプラクティスに基づいた学びを与えてくれます。この実務とアカデミックの両立が卒業後のバリュープロポジションとなる事は間違いありません。
Boothは、ビジネス環境の変化に柔軟に対応し、アントレプレナーシップ、マーケティング、ソーシャルインパクトといった強力な軸を持った学校へと変貌を遂げているものの、圧倒的なファイナンスの強みというのは引き続き健在であり、ビジネススクールでありながら、Master of FinanceやPhDを凌駕するような、無限の成長機会が用意されています。ファイナンス・マニアの方にはこれ以上の環境は存在し得ないと思います。