Academics

2019 Autumn Quarter 授業の履修状況

皆さん、こんにちは!Class of 2021のT.Kです。

Chicago Booth の特徴として「Flexibility」という言葉をお聞きになることも多いかと思います。今回は、BoothのFlexibilityが、どの程度各自の授業履修に反映されているかを、実際の授業履修の状況とともにご紹介できればと思います。

まず、前提として、Boothのカリキュラムの構成をご紹介いたします。

・必修授業として指定されているのは、LEADというリーダーシップの授業のみで、それ以外の授業は自分の好きなレベルのものを、好きなタイミングで履修できます。1年目はCore授業、2年目はElective授業といった縛りはありません。

・LEAD以外に、授業は大きく①Foundations、②Functions, Management, and the Business Environment (以下FMBE)、③Electivesという3カテゴリーに分かれています。

・①Foundationsは、Financial Accounting・Microeconomics・Statisticsの3分野それぞれからレベルは問わず1科目を履修することになっています。

・②FMBEは、Finance・Marketing・Operations・Decisions・People・Strategy・Business Environmentの7分野のうち6分野以上からレベルは問わず1科目を履修することになっています。

・③Electiveは完全に自由に履修を進めることができます。他学部の授業もElectiveにカウントされます。

・修了要件は2年間で20科目=単位2,000Unitです。

下記、Class of 2021の日本人が、実際にBoothの最初の学期(2019 Fall Quarter)に履修している科目の一覧です(LEADを除く)。尚、FMBEの科目にはElectiveにも重複してカウントされるものがありますが、その場合はFMBEとして色づけています。またMBA/MPCSのJoint Degreeが対象のコンピューターサイエンスの授業は別の凡例を付けています(ただし、今学期は履修者なし)。

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少し補足をさせて頂きますと、

・どの学期で何コマ取るかも自由(まさに「Flexibility」その①)です。例えば、就職活動が忙しいので今学期は3コマ履修、来学期から本格的にクラブ活動に参画していきたいので今のうちに4コマ履修、など、各自の希望、スケジュールに応じてカリキュラムを組み立てている感覚があります。

・同じ授業(例えば、「Financial Accounting」)であっても、どの時間のどの教授の授業を履修するかは各自の自由(まさに「Flexibility」その②)です。上記で同じ授業となっているものも、別の時間帯、別の教授の場合が多く、また、教授それぞれの授業スタイルも異なるため、各自の理想に沿って履修を設計しています。

・1年生の1学期目から3名がアントレプレナーシップの授業を履修しています(まさに「Flexibility」その③)。

・上記は全て1コマ=1週3時間×11週=単位100Unitの授業になります。今学期履修している人はいませんが、5週間で単位50Unitの授業もあります。

・最初の学期は多くの人がFoundationsを履修する傾向にあります。これは、他の授業の多くにFoundationsがPrerequisiteとして指定されているためです(職務経歴等によりWaiveも可能)。

・同じFoundationの中でも学部時代に既に履修していたり、職務の中で経験している場合は、以下のような中上級クラスを履修することも可能です。

■Financial Accountingの上級クラス(Accounting and Financial Analysis I)

税金、外貨換算、連結、退職給付、リースといった、いわゆる上級論点について学んでいくコースです。授業の中で実際の財務諸表を用いた実例、双方向のディスカッションが多く取り入れられいるのが特徴です。また学期中4回アサインされるケースでは、グループワークと授業中のケースディスカッションにより、各論点を実例を通じてより深く理解することができます。教授(Hans B. Christensen教授)はPwCで会計士として働いていた経験もあり、学術、実務双方からバランスの良い知見が得られます。私は日本の公認会計士バックグラウンドなのですが、アメリカの会計基準について理解を深めることができ、非常に有益でした。(Class of 2021 T.K)

■Business Statisticsの上級クラス(Applied Regression Analysis)

回帰分析(主に線形回帰、ロジスティック回帰)の手法を学ぶ統計学の上級コースです。各講義で分析手法を学んだ上で、R言語を用いて様々な課題を実際に解いていくことで、実用的な分析スキルを身に付けます。また、学期後半の約5週間では、授業・課題と並行して、グループ毎に自由なテーマでリサーチプロジェクトに取り組みます。私のグループではNBAの選手データを用いてチームの勝率や各選手の契約金の水準等に関して分析を行いました。

Boothにはデータ分析関連の魅力的な授業が数多くあります。そうした授業を今後履修していくにあたり、最初の学期に統計の理論のみならず実践的な分析手法(時系列解析、LASSO回帰、リッジ回帰、情報量規準によるモデル選択、といった分野までカバー)を学ぶことができ、非常に有意義でした。(Class of 2021 Y.O)

また、アントレプレナーシップの授業については、受験者、同級生含め非常に関心の高いところです。そこで、実際の履修者に体験談をシェアしてもらいました。

■New Venture Strategy

スタートアップ企業を評価するためのフレームワークを習得する授業です。

企業戦略を8タイプに分類し、各タイプ毎に成功するうえで要となるポイントを学びます。授業は1~7週がケース、8、9週が自分達の起業アイデアを投資家を前にピッチします。

教授自身がよく言っていますが、シード期などアーリーステージのスタートアップを対象とした授業であり、フレームワーク自体が定性的であるため、好みは分かれそうです。自分としては、不確定要素の大きいアーリーステージにおいては有効なフレームワークだと感じましたし、教授がエンターテイニングでちょっとした小話が含蓄に富んでいて学びが多かったので、大のお気に入りでした。

ケースは、MBA生が失敗する話が多く、起業を考えている人には特におすすめです。また、チームを組んで投資家に対してピッチするのもいい経験となりました。投資家や同級生からフィードバックをもらい、プラン自体の是非と自身がピッチする際の見え方などを知ることができ、勉強になりました。(Class of 2021 S.A)

■Building the New Venture

Boothの数あるアントレ系の授業の中でも、BNVはスタートアップのアイデアが既にある中で、具体的にそれをビジネスとしてどう発展させていくかを学ぶ授業です。

内容としては、スタートアップにおけるFinance(ファンドレイズに加えエクイティの配分など)から、Marketing、Operating、更には、Human Resourceの手法について一通り学んでいきます。また、授業の進行に連動する形で、4~5人で組んだチームで仮想のスタートアップ(YourCo)を立ち上げ、毎回の授業の題目に沿った課題についてレポーティングを行うため、密なグループワークが求められる授業です(先生からのフィードバックもかなり丁寧でgood)。また、毎回のケース(多くがBoothオリジナル!)に合わせて、そのケースの主人公たるゲストスピーカーが来ることもあるので、実務的な話も聞けて純粋に面白かったです。

年度後半におけるNVC(New Venture Challenge)へ参加する人間(特に1年生)にとっては秋学期中にアイデアを練る格好の機会ですし、自分のようにベンチャーバックグラウンドの無い人間でもあくまでスタートアップの事業面をゼロから学んでいく趣旨の授業なので十分にキャッチアップできます。なお教授曰く、この発想はスタートアップに限らず、スモールビジネスにも応用できるとのことなので、ETA(サーチファンド)やファミリービジネスに興味のある人にもお薦めです 。(Class of 2021 Y.T)

いかがでしたでしょうか。BoothのFlexibility、自由度の高さを少しでも感じて頂ければ幸いです。

学期が進むについて自由度は増していきますので、引き続きレポートいたします!

【ロングインタビュー】Private Equity and Venture Capital Lab

Boothの数ある授業の中で最も人気のある授業の1つがPrivate Equity and Venture Capital Lab(通称PE/VC Lab)です。この授業は、 PE/VCの両セクションに分かれて、実務家教員(PE: Chris McGowan, VC: Jason Heltzer/Ira Weiss)から実務を学ぶとともに、学期中にPEまたはVCで10週間以上インターンする設計になっています

あまり知られていませんが、シカゴはアメリカにおいて、カリフォルニア、 NY、ボストンに次いで大きなPE/VC市場で、シカゴだけでもPE500社/VC200社以上が存在しています

今回はそんなPE/VC Labの魅力やインターン事情について、2019年春学期にPE/VC Labを履修している3人に話を伺いました

Aさん:PEセクション。Class of 2020

Bさん:PEセクション。Class of 2020

Cさん:VCセクション。Class of 2020


―まず、PE/VC Labの履修方法について教えてもらえますか

A: 履修を希望する学生はレジュメを事務局に送り、レジュメをもとに本プログラムに参加しているPE/VCファームとのマッチングが行われます。面接等を経て、ファームからインターンのオファーを得た学生のみが授業を履修できます。プログラムに参加しているファームは80社ほど。1つのファームで複数人のインターンを受け入れるパターンもあり、全体として履修者は130人くらいです。今年は350人強が応募したそうです

C:授業は春学期(4-6月)ですが、アプリケーションは10-11月。すぐにファームが決まって1月からインターンする人もいれば、開始が4月以降になる人もいます

A:期間中に10週間以上、週15-20時間程度インターンを実施します。ファームはシカゴに限らず、NYやサンフランシスコでインターンしている人もいます。インターンに加えて授業が週3時間(1コマ)。授業はPEセクションとVCセクションで基本的に別々ですが、10週間の授業期間のうち2回ほど、同じゲストスピーカーの話を聞くため共通の授業となります

―皆さんはなぜこの授業を受けようと思ったんですか

B:投資銀行でPEのお客様と仕事をした経験があり、PE業務の奥深さを感じるとともに、内製化が可能でFAを雇うインセンティブが低いPEファンドに対して投資銀行が付加価値を出すためにはよりファンドのビジネスを理解しなければならないと感じていました。実際にPEファンドで働くという経験は、同じM&Aを扱うにしても違うサイドから見ることができるので、非常に役立つと感じています

A:私は前職で、地方の中小企業に投資をしたことがあり、日本のプライベートセクターには情報の非対称があると感じていました。他方で、アメリカにおけるPEファームはそのプレゼンスが大きく、情報の非対称性を解消する役割が進んでいると感じたため、実際に中から経験したいと思いました

C:私はVCセクションですが、VCが何を見て事業を評価しているのかという点に興味がありました。前職で投資関連の仕事をしていましたが、アーリースタートアップをどのように見定めるのかよく分からなかったため、VCで働いてシードのスタートアップを見てみたいと思いました

―皆さん、インターンはどこで行っていますか

C:Polsky CenterInnovation FundというVCでインターンしています。プリシードのみを対象としており、まだアイデア段階のビジネスや、技術のみの企業を支援しています。基本的にfollow-onは行っていません。ファンド全体で年に最大で10プロジェクトの支援をすることとなっており、5つのチームが、10週間で投資判断を行うサイクルを2回こなします。Innovation Fundには一般のアプリケーションより前の10月頃に応募しました。面接等のプロセスはPE/VC一般とあまり変わりません。チームの編成が特徴的で、MBA、ロースクール、公共政策、PhD、Undergradの学生の5人で構成されます。MBA生からは5チーム分の計5人が選ばれます。応募者は100人程はいたと思うので、倍率は高いです。なお、Innovation Fundのメンバーに選ばれた場合には、PE/VC Labの授業を履修するかどうか選択することができます。チーム内やチーム間でのFeedbackのほか、製薬の知財権の取得の仕方、 FDA approvalの取得方法、プレゼンテーションの仕方などを教えてもらいます。他のインターンシップに比べて研修制度はしっかりしていると思います

B:私はNYのLMM Capital Partnersというファンドでインターンしています。ステージはバイアウトとグロース、インダストリーはManufacturingとBusiness serviceをテーマに幅広く対象としています。サイズとしてはLower-middle marketで、$20M-50MのEquity 投資がターゲット。私は、PE/VC Labの通常のアプリケーションでは先方から面接が設定された会社はありませんでした。そのため、アラムナイ経由や、LinkedInやPitchbook等を通じて様々なファームにコンタクトをして、最終的に、今インターンしているファンドが、PE/VC Labを知らなかったもののインターンを受け入れた経験があるということで交渉した上でオファーをもらいました。最終的に決まったのは3月くらいです。ちなみに、インターン先は授業が始まる4月の初週までには決まっている必要があります

A:私はSterling PartnersというPEファンドでインターンをしています。シカゴで30数年やっている老舗のファンドです。サイズは基本的にはmiddle capで、”first institutional capital”(他のファンドの後ではなく、最初の投資家)であることにこだわっています。業界にあまり縛りはなく、founderの自己資金を使ったグロース、インキュベーションに近い領域も対象にしています。私の場合はSterling Partners Investment Thesis Challenge (SPITC)というプログラムに応募しました。SPITCはチームとして投資アイデアを応募し、そのチーム単位でインターンを受け入れてもらう仕組みになっていて、1チーム4-5人、計5チームが受け入れられます。アプライしたのは13チーム。個人としてファームの業務を行うことはできませんが、関心ある領域に特化してインターンをすることができます。またSPITCに通った場合には、PE/VC Labを履修するか選ぶことができます。1月初がアプリケーションの締め切りで、11月くらいから準備を始めました。私のチームは私以外に中国人1人とアルゼンチン人2人がいます。後から知ったのですが、全員インターナショナル生のチームがSPITCに受かったのは史上初だったそうです

C:VCセクションでは、自分でインターン先を見つけた、または授業に関係なく元々インターンをしていた、という人たちが1/3くらいいます(アメリカ国籍に限る)

A:インターナショナル生の場合、1年目は自由にインターンができず、大学のプログラムとしてインターンする必要があるので、アメリカ人と比べると不利だと思います


―インターンではどのようなことをしていますか

B:主に2つあり、1つはディールのソーシングを捌く仕事をしています。様々な会社のInformation Memorandumが回ってくるので、それを1つ1つチェックして、最終的にその案件を追いかけるか、追いかけないか判断して10枚程度のレポートにまとめています。もう1つの仕事としては、追いかけている案件のExecutionを手伝うということで、例えば1週目にNon-Name Baseの情報を基にマーケットリサーチ、2週目に実際の対象企業の調査、3週目はFinancial Modeling、4週目は投資委員会向けの資料のまとめといった調子で実際のディールのタイムラインでヘルプを行っていました。上司との間では、電話とメールベースで成果物についてフィードバックをもらっています。週のコミットメントとしては、リモートゆえに仕事量の擦り合わせが難しく、結局5日間働くこともあります

A:私の場合は1-5月末がSPITCの期間ですが、ファーム側の意向を聞きながら投資対象を絞り、関連するトレードショーで興味を持ってくれる会社を数社見つけた上で、そのうち1つの会社を選び、デューディリジェンスを行いました。現在は1回目の投資委員会に通って、タームシートを作っている段階です。Sterling Partnersにも担当者はいますが、基本的に自分たちで回しています。定期的にその担当者との間や、チーム内で打合せを行っていますが、1日中拘束されるということはないです

―非常に高いコミットメントが求められる印象ですが、他の授業との両立はできていますか

A:PE/VC Labを履修する場合には、授業を3コマまでにすることが推奨(highly advised)されています。私の場合はComputer Scienceも専攻しており、計4コマ履修しています。SPITCは拘束時間が比較的少なく(10時間程度)、両立可能でした

C:私も4コマ履修しています。Innovation Fundの場合、インターンする時間は決まっていませんが、実際にはいつでもFounderから電話がかかってくるので、24時間対応しないといけないのが辛いところです。トータルでは週15-20時間くらい使っていると思います

B:授業は3コマとっています。他に履修している授業は Strategy Lab(チーム単位で実際にコンサルティングを行う授業)で、こちらもそれなりに負担はありますが、なんとか両立させています

―インターンの良かった点、また、不満に感じた点はありますか

C:Innovation Fundの場合、チームプロジェクトではありますが、 MBA生が4割ぐらいの仕事を行い、他のメンバーにビジネスについて教えながら進めていく形になります。ビジネスサイドの相談が基本的に私に集約されるのが辛いですね。夢を語られてもあまり響かない人にはオススメしないです。投資先と同じ熱さを感じられないと難しいと思います

A:自分たちがPEファームとして投資先にコンタクトして、デューディリジェンスを行い、アメリカのローカルな会社への投資を実際に検討している機会はとても貴重だと思っています

B:良かった点は、まずはアメリカで働くという経験です。英語でのコミュニケーションにより細かい点を確認せず進めた結果、後々手戻りが生じたこともあり、そういった経験も貴重だと感じました。他方で、金融業界での専門用語や常識等が、自分が日本で触れていたものと同じなので、全く違和感なく働けるなという感覚も得られました

A:同感です。アメリカの方が使えるFinancial instrumentsが多く、PE投資に対する心理的なハードルがずっと低いといった違いはありますが、裏で行っている業務内容は極めて日本と地続きと感じます。そこは自信になりました

―授業についても教えてください

C:VCセクションでは、Cap Tableを作るときにどのようにfounderの利益を確保しつつ自分の利益を最大化するか、シリーズAで上手くいかなければシリーズB,Cでどのように負けないようにするかといった実務的な内容が学べます

B:PEセクションでは、教授のChrisがとても親切で、話が非常に具体的です。授業には毎回テーマがあり、ファンドのストラクチャー、M&AにおけるSPAのターム、DDポイント、Value upプランなど、一通り学べるという点が良いです。前回はNegotiationの授業でしたが、これも良かったです。6人でチームを組み、ファンドに投資されている会社がRecapするというテーマでした

A:他にも、PE Labを履修すると、Chrisから様々な記事や役立つ情報がメールで送られてきます

B:Chrisはこれまで履修した全ての学生のレジュメを持っていて、現在履修している他の学生とはレジュメを共有したり、ホストのPEファームとパーティがあるなど学生と繋がろうとする姿勢は深く、彼は「この授業も含め、全てがネットワークだ」と言っていました

A:ゲストスピーカーも非常に良いです。例えば、この前はChrisのファンドのポートフォリオカンパニーのCEOが、Chrisと過去に揉めた時の話をしてくれました。当時の資料を見たり、その理由をChrisに聞いたりすることができ、面白かったです

―PE/VC業界に興味があるという受験生は多いです。BoothからPE/VCへの就職についてどのように見ていますか

B:シカゴエリアではPolsky Centerのプレゼンスが高く、Polskyの提供するプログラムもとても充実していると感じます。シカゴエリアのPEには、Boothが圧倒的に人を送り出していると思います

C:日本でも、PE/VC業界では多くのBoothアラムナイが活躍していますね

―最後に受験生へのアドバイスをお願いします

B:PE/VC Labはとてもユニークで、私もBoothの受験を考えたときに初めに注目した冠授業です。教授やクラスメートとの交流も含めて、授業でありながらも実務の経験を積めるというところは有意義だと思います

A:Boothは、他の学校に比べてPE/VCに関するプログラムが充実していて、とても勉強になると思います

Interviewer: K (Class of 2020)

Fintech at Booth

こんにちは、Booth Class of 2020のTHです。

ファイナンスとテクノロジーは多くのBoothの学生が興味を見せる二大分野であり、それらの融合であるFinTechに関連する活動は、自ずと大変な盛り上がりを見せています。私自身、FinTech ClubのCo-Chairとして、米国におけるFinTechの先進的な試みを数多く学んでいます。ここでは、BoothにおけるFinTechの取り組みの一部を、クラス内・クラス外に分けて紹介させて頂きます。

クラス内での機会

Boothの授業選択のFlexibilityを支える重要な要因として、学生や社会のニーズをいち早く取り入れる豊富な授業のラインナップがあります。例えば、FinTechの分野においては、‘The FinTech Revolution’ や’Cryptocurrency and Blockchain: Markets, Models and Opportunities’といった授業がここ数年で開講され、人気授業となっています。

また、Boothが近年力を入れているEntrepreneurship関連の授業を履修することで(EntrepreneurshipのConcentrationとして登録されている Boothの授業は、当記事執筆時点でなんと45も存在します!)、FinTechに興味がある学生とチームを組んでアイデアを試すことが可能です。例えば、私は一年生の秋学期に履修したEntrepreneurial Discovery(チームを組んで事業アイデアを練る授業)を通じて、FinTechに関するビジネスプランを構築する過程で、現地のFinTech企業のプロフェッショナルとの多くのコネクションを持つ事が出来ました(この活動を通じてインターンシップのオファーを貰った学生も居ます)。

入学してすぐの秋学期から、このような実践的な授業を通してアウトプットを試すことが出来るのは、BoothのFlexibilityの一つの真骨頂であるといえます。

クラス外での機会

金融活動が盛んなシカゴには多くのFinTech企業が存在します。Boothの学生は、Polsky Center(Boothが運営する起業家育成センター)やクラブ活動などを通して、それらとの緊密な関わりを持つことが出来ます。ここではシカゴの先進的なFinTech企業の一部を紹介させて頂きます。

BrainTree
2007年設立。Web上の決済サービスを営む会社です。米国の若者では知らない人が居ない’割り勘ツールVenmoを買収した会社として有名です。現在は決済サービス大手PayPalの一事業となっています。

Ascent
2015年設立。自然言語解析などの技術を使い、クライアントに関係のあるコンプライアンス関連の事象を自動的にアップデートするサービスを提供しています。Ascentは、近年米国で急成長している’RegTech’(Regulatory Technology)の関連企業に位置づけられます。

実は、上記の企業はどちらもBoothの卒業生によって設立されました。それだけではなく、どちらもPolsky Centerが主催するNew Venture Challengeを通してアイデアが練られ、Finalistとして勝ち上がったという大きな共通点があります(中でもAscentはPolsky Centerによって $315,000の投資を受け入れています(https://polsky.uchicago.edu/2018/03/01/uchicago-invests-in-regtech-company-founded-by-chicago-booth-alums/)

Boothの目玉イベントとして知られるNew Venture Challengeですが、その20年を超す歴史の中で、学校の一イベントという枠を超えて多くの起業家の育成に成功していることが分かります。FinTechという一分野をとっても、Boothの提供する機会の豊富さと、社会へのインパクトの大きさに驚かされます。

自由度の高い授業環境: 2019 Winter Quarter

皆さん、こんにちは!Class of 2020のH.Mです。

11月にClass of 2020の日本人14人が、2018年Fall Quarterに実際にどのような授業を履修しているかを投稿しました。今回は、2019年Winter Quarterの実際の履修状況をお伝えできればと思います。

以下が履修科目の一覧です。各授業の分類については前回の投稿をご確認ください。

Foundation
Functions, Management, and the Business Environment
Electives
MPCS
Aさん 35201 - Cases in Financial Management 35214 - Debt, Distress, and Restructuring 40000 - Operations Management
Bさん 34101 - Entrepreneurial Finance and Private Equity 35200 - Corporation Finance 37000 - Marketing Strategy 42001 - Competitive Strategy
Cさん 30116 - Accounting and Financial Analysis I 35214 - Debt, Distress, and Restructuring 40000 - Operations Management
Dさん 30001 - Cost Analysis and Internal Controls 30130 - Financial Statement Analysis 40000 - Operations Management 42117 - Platform Competition
Eさん 34304 - Cryptocurrency and Blockchain 35000 - Investments 35214 - Debt, Distress, and Restructuring 38002 - Managerial Decision Making
Fさん 35000 - Investments 37000 - Marketing Strategy 40101 - Supply Chain Strategy and Practice
Gさん 30116 - Accounting and Financial Analysis I 34101 - Entrepreneurial Finance and Private Equity 35000 - Investments
Hさん 34101 - Entrepreneurial Finance and Private Equity 36110 - Application Development 41100 - Applied Regression Analysis 52011 - Introduction to Computer Systems
Iさん 38001 - Managing in Organizations 42001 - Competitive Strategy 42108 - Corporate Governance
Jさん 34110 - Social Enterprise Lab 35000 - Investments 40000 - Operations Management
Kさん 30121 - Accounting for Entrepreneurship 33040 - Macroeconomics 33503 - Managing the Firm in the Global Economy 35000 - Investments
Lさん 33040 - Macroeconomics 34722 - Scaling Social Innovation Search Lab 35000 - Investments 38001 - Managing in Organizations
Mさん 34302 - Entrepreneurship through Acquisition 38001 - Managing in Organizations 38103 - Strategies and Processes of Negotiation 41100 - Applied Regression Analysis 55001 - Algorithms
Nさん 33040 - Macroeconomics 34103 - Building the New Venture 41100 - Applied Regression Analysis 42117 - Platform Competition

いかがでしょうか?Fall Quarterでは、Foundationの授業履修が多かったですが、今学期は皆、FoundationからElectieveに至るまで多様な授業を履修しており、まさにBoothのFlexibilityの高いカリキュラムを存分に活かした形になっているかと思います。(先学期同様、同じ科目名の授業でも、どの時間帯の授業を履修するかは自由です。)


1年生のうちから様々なElective授業を履修できるのが一番の特徴と思います。実際の履修者にElectiveがどのような授業なのかを紹介してもらいましょう。

Debt, Distress, and Restructuring

Corporate Financeの分野の上級クラスの一つで、企業のCapital StructureとDistress投資の二つを主に扱います。Capital Structureのセクションでは、Capital Structureは企業価値に影響を与えないというMM理論の限界を説き、Capital Structureがどうキャッシュフローに影響してくるか、最適なCapital Structureどうあるべきかについて学びます。例えばLBOにおいて、Tangibleな資産をSPCに移して倒産隔離を測り、ABSによる資金調達を行うことでどれほど利率を下げられるかを計算する等、かなり細かい実務面に踏み込んでいる印象です。Distress投資のセクションではハイイールド債への投資から、経営破綻寸前の企業のバイアウトのケースまで幅広く扱い、Credit Default Swapの仕組みやChapter 11の申請を一通り教えた後、最後に各グループでDistress投資のピッチをつくり発表するという内容になっています。どちらのセクションもハイレベルな内容で、教授やプログラムを提供可能という観点、学生側のニーズが高いという観点で、金融に強いBoothならでは授業ではないかと思います。(Class of 2020 R.I)

Social Enterprise Lab

Social Impactにフォーカスした、Labコース(実在企業などの問題解決に取り組むプロジェクト型授業)の一つです。クライアントは、伝統的なnonprofit(非営利組織)だけでなく、社会的課題の解決をミッションとするfor-profit(営利企業)まで含まれます。私のケースでは、中小企業やNPOにフォーカスした40名規模のコンサルティングファーム(for-profit)がクライアントで、幅広い中小企業・NPOにリーチするための新規サービス開発 / 市場リサーチに5人のチームで取り組んでいます。中小企業やNPOへの個別コンサルは、採算化が難しく、事業をスケールさせていくにも限界があるので、行政・財団・投資家・銀行・大企業などのエコシステムレベルの組織を直接的なターゲットとして、彼らを通じた中小企業・NPO向けのサービスやプログラムを作っていくのが基本的な方向性です。秘密保持のため詳述は控えますが、クライアントが温めた複数のコンセプトに対して、潜在顧客・パートナー・業界専門家などへのインタビューやアンケートなどを通してマーケット調査を行い、ビジネスケースを立案するところまでが責任範囲です。このLabコースには、Social Impact業界への就職に本格的に取り組んでいる人から、好奇心ベースで受講している人まで参加の動機は様々であり、Harris(シカゴ大学公共政策大学院)からの参加者も多いので、様々なバックグラウンドの人が集まるのも特徴の一つです。業界経験の豊富なコーチ(メンター)が各チームに付き、教授と合わせてプロジェクトの進行をサポートしてくれるので、彼らのアドバイスやフィードバックが非常に有益だと感じています。(Class of 2020 J.Y.)


Accounting for Entrepreneurship

設立からIPOに至るまでのStartupの成長過程において、CFOとして必要になる知識を習得する授業です。Accountingと名がついていますが、会計よりもStartup特有の財務戦略をメインに扱います。トピックとしては、Common stockとPreferred Stockの違い、Cap tableの構築とOption poolの設定、会社形態(LLC, C-Corpなど)の違いによる税務上の長所・短所、Founder間の株式分配、役員・従業員報酬(Stock optionなど)の配分、VC・社債・IPOによる資金調達などを取り扱います。教授(Ira Weiss)はAngel投資家やソフトウェア開発企業のBoard Memberとしての実務経験もあることから、実在企業の事例などを多く交えて講義が構成されています。また、税務戦略の専門家(Taxes and Business Strategyという別講座も担当)でもあることから、Startup特有の税制優遇や会計処理などについても扱います。(Class of 2020 T.K.)

授業の履修については、今後もお伝えできればと思います。

Finance Classes @ Booth

2年生のざきやまです。

 

私はBooth入学前に投資銀行でフィナンシャル・アドバイザー(FA)業務を行っていたのですが、当時からコーポレート・ファイナンス理論やコーポレート・バリュエーションに大きな関心がありました。

当時は仕事の傍ら専門書を読み漁ったり、同様の関心を持つ先輩バンカーと議論したりしながら、FA業務を行っておりました。

 

そんな中、市場では「マイナス金利政策」や「HFTやアルゴリズム・トレーディングの普及」等の大きな変化が起こり、CAPM等の従来の伝統的な投資銀行のアプローチに単に従って業務を行っているだけでは本質的なアドバイスを行う事は難しくなってきたと認識しました。従って、①専門書に掲載されているHow toで対応するには限界がある為、コーポレート・ファイナンスやバリュエーションの根幹(What)までをしっかりと理解し、その上で、然るべき前提を柔軟に変更して、ケースバイケースにおける本質的なアプローチが出来るFAが必要とされると考えました。

加えて、②従来の成熟大企業を対象としたコーポレート・ファイナンス/バリュエーション理論に加えて、スタートアップやVCの普及に伴い、アーリーステージの企業に対するアプローチや、プライベート・エクイティの発展に伴った、中小企業へのアプローチも、特性として認識する必要があると思いました。

 

Chicago Boothはその双方を満たす授業を提供しております。

 

①に関しては、例えばユージン・ファーマ教授(2013年ノーベル経済学賞受賞)のPortfolio Choice and Asset Pricingという授業があります。基本的にファーマ教授の著書及び論文を読み(毎週5本程度読みます)、それを基にクラスで議論をするという形態です。ファイナンスに詳しい方はご存知かと思いますが、ファーマ教授はCAPMで説明のつかないアノマリーに対して、スリー・ファクター・モデル(株式のリターンは市場リターン、時価総額、PBRの逆数の3つのファクターと相関があるというモデル)というアプローチを開発した方です。著名人なのでさぞかし頑固かと思いきや、小生なんかのモデル前提に対する指摘に対してもあっさりと非を認め、なぜその前提を選択したのか、その副作用として他の前提を犠牲にしたのかをしっかりと説明してくれました(私の指摘は、ファーマ・マクベス回帰において2段階目の回帰アプローチ時βが高い順にグループ化して回帰分析する事により、意図的に標準誤差を調整しているのではないか?という指摘でした)。本授業は、MBA生向けであるものの、PhDレベルの授業という事で、月曜と水曜に週2回授業があるのですが、毎週水曜にTake Home Exam、隔週月曜にデータ分析を用いたProblem Setの提出が求められる為、時間的コミットメントの大きい授業となります。

 

②に関しては、2つの軸(会社のステージと、誰にとっての視点か)に基づき、複数の授業がオファーされております。例えば会社のステージがスタートアップであり、視点が株主ということであれば、Venture Capital LabやCommercializing Innovationという授業がオファーされておりますし、視点が経営者ということであれば、Entrepreneur DiscoveryやBuilding a New Ventureという授業がオファーされております。会社のステージが成熟期で視点が投資家であればPrivate Equity LabやEntrepreneur Finance and Private Equityという授業が、会社のステージが衰退期であれば、Debt, Distress and Restructuringという授業がオファーされております。Labの授業に関しては、授業外にシカゴ地区でのPrivate Equity若しくはVenture Capitalでのインターンシップ(週2以上)が求められる為、アカデミックと実務の両輪で学びを得る事が出来ます。また、アントレ系の授業では、起業家で自身の企業を複数回IPOしたMark TebbeやScott Meadowの様な実務出身の教授がマーケットプラクティスに基づいた学びを与えてくれます。この実務とアカデミックの両立が卒業後のバリュープロポジションとなる事は間違いありません。

 

Boothは、ビジネス環境の変化に柔軟に対応し、アントレプレナーシップ、マーケティング、ソーシャルインパクトといった強力な軸を持った学校へと変貌を遂げているものの、圧倒的なファイナンスの強みというのは引き続き健在であり、ビジネススクールでありながら、Master of FinanceやPhDを凌駕するような、無限の成長機会が用意されています。ファイナンス・マニアの方にはこれ以上の環境は存在し得ないと思います。

ファイナンス界のレジェンド ユージン・ファーマ教授(2005年ノーベル経済学賞受賞)

ファイナンス界のレジェンド ユージン・ファーマ教授(2005年ノーベル経済学賞受賞)