シカゴの子育て環境について

皆さんシカゴといえばどのようなイメージをお持ちでしょうか。高層ビル群や美術館、ジャズを思い浮かべる方や、名前はよく聞くもののあまり街並みのイメージが湧かない方もいらっしゃるかと思います。本日はそんなシカゴの住環境や子育て事情について簡単にお伝えしたいと思います。

家族帯同でMBA留学を考えている方にとっては、ご家族の生活環境も学校選びの大きな要素となるかと思います。シカゴはNY、LAに次ぐ全米第三の都市なので、単身で来る方が学生生活を満喫する姿は比較的容易に想像できるかと思いますが、子連れの方にもおすすめの都市になっていますので、住環境という観点からも是非Chicago Boothに興味を持ってもらえればと思います!

 

1. 住居

多くのBooth生はシカゴのダウンタウンエリアに住んでいます。以下地図上の🏠アイコンにて代表的なマンションをいくつか示していますが、主にダウンタウンの東側、ミシガン湖に隣接するエリアにBooth生問わず多くの家族連れが住んでいます。共用スペースにプールやキッズルームを備えた子連れに優しいアパートメントも複数あります。このエリアは、BroadwayやMacy’s等があるダウンタウンの中心街まで数ブロックという立地にありながら、Millennium ParkやMaggie Daley Park、Chicago Children’s Museum、Ohio Street Beach等子供が喜ぶ公園や施設へも徒歩圏内となっています。 シカゴはバスや電車等の公共交通機関が発達しており、また日々の子供とのお出かけは徒歩圏内でも十分完結できるので、車がなくても楽しめる都市になっています。

2. 公園、施設、スーパーマーケット

ここでは、いくつか居住エリアから徒歩圏内にある公園や施設、スーパー等を紹介します。(各番号はマップ上の番号とリンクしています。)

① Maggie Daley Park (https://maggiedaleypark.com/)

The Beanというオブジェで有名なMillennium Parkはシカゴの観光名所になっていますが、その隣にあるMaggie Daley Parkは家族が楽しめる大きな公園となっています。Play Garden、Climbing Wallやスケートリンク等のアクティビティに加え、Kiddie CollegeやPlay Schoolといった児童向けのクラスも開催されています。上記の居住エリアから徒歩10分圏内にあるため多くの子連れ家族の憩いの場となっています。

Play Gardenの様子はこちら (公式HP https://maggiedaleypark.com/things-to-do-see/play-garden/より)

② Chicago Children’s Museum (https://www.chicagochildrensmuseum.org/)

居住エリアから20分程歩いた、Navy Pierと呼ばれるミシガン湖岸の埠頭には観覧車やレストランの入ったモールが位置しており、その中にChicago Children’s Museumがあります。Museumという名前ながら実際には大きな室内遊び場になっており、恐竜の化石模型の発掘場や消防車の模型、お店屋さんごっこが出来る子供用スーパー、Water City、図工教室等様々なコンセプトの遊び場があります。内容は定期的に変わるので、何度行っても楽しめるのは大きな魅力です。特にシカゴの寒い冬には貴重な遊び場なので、年会員になっている家族も数多くいます。

③ Ohio Street Beach

Chicago Children’s Museumのすぐ横にはビーチエリアがあります。ミシガン湖に面したコンパクトなビーチとなっており、夏には多くの方が訪れます。波もなく海沿いのビーチのように混雑していないので、特に小さな子供を連れていくにはおすすめの場所です。

④ Lake Shore East Park

居住エリア内にある公園で、滑り台やブランコ、アスレチックといった遊具が一通り揃っている為、最も気軽に遊ばせることが出来る場所です。公園を囲むようにマンションが立ち並んでおり、また、広い芝生スペースもあるため、Downtownの喧騒を感じないスペースとなっています。近くに住んでいる子供連れ家族が頻繁に訪れるため、親同士がここで顔なじみになることも多くあります。イースターにはEgg hunt、ハロウィンには仮装パレード等、家族向けのイベントも数多く開催されます。

⑤ Mariano’s

シカゴエリアを中心に展開するスーパーマーケットチェーンで、食料品や日用品はおよそ何でも揃います。アメリカでは車を前提とした大型スーパーが多い中、歩いて数分でアクセスできるスーパーがあるのは大変重宝します。店内には小さなバースペースもあり、近隣の方やBoothの学生もよく出没します。

⑥ Whole Foods Market

北に15分程度歩くとWhole Foods Marketもあります。オーガニック食品、鮮魚、精肉等も充実しており、Mariano’sに飽きた方や食材にこだわる方はこちらのスーパーも手軽に利用可能です。すぐそばにはChicago Boothのダウンタウンキャンパスもあるため、Evening Class受講後にデリコーナーに寄って帰ることもできます。

⑦ Chicago Riverwalk

ミシガン湖と繋がるChicago Riverに沿って、約2km程の遊歩道が続いています。途中にはカフェやビアガーデン、若干の遊具等があり、散歩をするだけでも十分楽しめます。Chicago Riverでは、Duck Derbyと呼ばれる数万個ものゴム製アヒルを川に放ちレースを行う慈善イベントが行われたり、St. Patrick’s Dayには川を緑色に染めたりと見どころ満載です。

(写真はSt. Patrick’s Dayに川が緑色に染められた時のもの)

今回の記事では徒歩圏内の施設等を中心に紹介しましたが、こちらの過去のブログではバスや車ですぐの美術館や動物園、水族館等も紹介しておりますのでぜひ合わせてご覧ください。

https://chicagobooth-japanclub.squarespace.com/student/blog/2019/1/8/-chicago

 

 3. Daycare, Nursery, Preschool

子どもが多くの時間を過ごすこととなるスクール選びはMBA生活でも重要な選択になりますが、シカゴには公立や私立を含め多くの学校があります。特にDaycareやNursery、Preschoolといった保育施設がBooth生の居住エリアに多く存在するのもシカゴという大都市ならではの特徴です。いくつか代表的なものを以下の地図にプロットしていますが、住居から徒歩圏内のエリアでもこれだけの施設があります。全米チェーンのBright Horizonsや、モンテッソーリ教育に力をいれている先、少しダウンタウンの中心から離れ学費が安い所等、数多くの選択肢がありますので、きっとご希望に合った学校が見つかるかと思います。

  

今回は最近の記事とは毛色を変えて子育て環境について書いてみました。このほかにも、スポーツ観戦、ミシガン湖沿いの花火、バックパック一杯のお菓子が配られるハロウィーンイベント、近くの農場でのPumpkin Patchなど、家族と過ごすシカゴの魅力はまだまだいっぱいありますので、より詳しく聞きたい方は是非ご連絡頂ければと思います。

MBA/ CS Dual Degree プログラムについて

皆さんこんにちは、Class of 2024 の T です。

今回は MBA/ MPCS (Master's Program in Computer Science) Dual Degree のプログラムについて、実際に体験した授業内容や1年を通しての所感について述べていきたいと思います。

シカゴ大学の MBA/ MPCS は1)通常の MBA と授業料が変わらない点 2)2年間で2つの学位を取得できる点 3)文系バックグラウンドでも応募が可能な点 などから近年人気を博しております。また最近は Chat GPT などの生成 AI の登場やコンピューターサイエンス領域への関心が高まっていることに関係してか、本プログラムへの質問やお問合せを頂く機会が大変増えております。よって過去記事の内容と若干の重複はあるかもしれませんが、実際に私がアプライした背景や1年を通しての学びとなった部分について触れながらお話をさせて頂きます。

<背景>

まず、このプログラムを応募した背景については1)コンピューターサイエンスという学問への純粋な興味 2)就活軸 の2点が主なきっかけです。

1)については多くの方が一度は考えたことがあると思いますが、近年話題となっている 機械学習、深層学習、生成AIなど、テクノロジーの根本を理解したいという動機から来ていました。私自身、前職(テック企業のビジネス部門)にて勤務していた際に、実際に AI を活用したマーケティングツールを販売したり、日本での拡販戦略・企画などに携わる機会が多くありました。しかし AI/ アルゴリズム/ 機械学習 etc. と口には発するものの、それが一体なんぞや?と聞かれた際に深いレベルまで理解できない自分に常に悶々としていました。例えば、よく自分が答えられなかった質問として、そもそもどうやってアルゴリズムの構成を組み立てられているのか?どんなインプット(ユーザー情報)を読み込んで学習していくのか?機械学習がうまくいかない場合なぜ製品は不安定な挙動をとるのか?等々様々ありました。安易ではありますが、 CS を専攻する事でこれまでぼんやりとしていた技術に対する疑問や解像度が少しづつ上がるのではないか、と勝手ながら考えていました。

2)もう一つは、PM 就活(プロダクトマネージャー)をする上で CS の学位が優位になると考えた点です。上述の通り、前職では最後の2年は日本・APACでの製品・営業戦略を企画する立場として米国の PM などと接点をもつ場面も少なからずありました。とはいえ日本やAPAC 市場のニーズを実際に製品に反映させる様な意思決定・裁量権まではなかったので、より製品開発側に近い仕事をしたいと思い立ち、PM を就活の軸として考えるようになりました。PM は今でこそ日本でも少しずつ人気は出始めていますが、要するに製品開発の責任者です。コードなどは基本書きませんが、プロジェクトオーナーとしてエンジニアや各ビジネス部門と共同しながら製品開発を進めていくので、技術に対する素養や知見も求められます。よって、ビジネス(MBA)とエンジニア(CS)の両側面を学べる Dual Degree が最も最適ではないかと考えたのが、もう一つの背景です。

実際に入学し1年経った上で、2つの仮説に対する考えは少しずつ変わってきたと思います。

1)まだ1年目の必修を履修している段階なので、正直素人に毛が生えたレベルだとは思います、、がネットなどで目にする記事なども含めて技術的に何が書いてあるかは少しづつですが分かる様になってきている実感があります。具体的には後ほど記述しますが、 Chat GPT に使われている基礎技術や SNS や Google Map などに使われているアルゴリズムの概念など、徐々に理解がついてきたように思います。それに伴って、日頃の情報感度やアンテナなども少しづつ変わってきた様に感じますが、1年目は比較的理論ベースが多かったので、2年目以降はコンピューターアーキテクチャなどに加えて、ビジネスサイド(例:プロダクトマネジメントや UI/ UX) などの実践的な授業の割合も増やしていくことでよりビジネスへの応用編を学んでいきたいと思います。

2)については、実際には想定と違ったというのが正直なところです。もちろん CS の学位を持つことは Resume 上強いのですが、PM を目指す上では実務経験が何よりも大事だと就活を通して実感しました。これは会社によって Preference が異なるのですが、例えば Tech PM 一つとっても、学位 vs 関連した職務経験でいうと後者の方が圧倒的に強く求められています。(*会社によっては CS が Must to have の会社も存在します)必ずしもトレードオフではないですが、仮に PM 就活だけを最優先事項とした場合は、CS の学位取得よりかは Pre-MBA インターンなどで PM 経験を積むか、In-semester インターンなどで経験を積んだ方が優位に働くでしょう。また、シカゴ大学の CS の評判として、他大学と比較してもアプリケーションより理論ベースに重きを置いている為、就活的な観点のみならず、入社後もPMとして活躍できるような実践的な授業の履修やインターン等で職務経験を積極的に積むことが大変重要であると感じました。

過去のブログにも記載がありますが、とにかく Workload が多く、1授業あたりにかかる時間が週20時間を超えることもざらにあり1年目は大変でしたが、中長期的に自分のキャリアパスを技術部門へ広げてみたい方や、純粋にアカデミックへの興味が強い方へは特におすすめのプログラムとなっています。またこれは予想してなかったのですが、同じ Dual Degree の人たちは皆辛酸をなめながら過ごしているので、結束が強くなり結果としてとても仲良くなりました。笑

<授業内容>

最後に、1年目に私が実際に履修した授業の簡単なまとめです。

・Concept of Python Programming(パイソン)

プログラミング未経験者向けの導入科目ですが、なかなかのボリュームをすごいスピード感で学んでいきます。実際にソフトウェアエンジニアや経験者の方は事前の Placemenet Exam をパスすれば履修の必要はありません。

・Python Programming(パイソン)

必修科目の一つとして、経験者もソフトウェアエンジニアの方も履修が必要なクラス(場合によっては他言語、また中・上級者向けのクラスも履修可能です)。自分は初心者だったので、こちらの授業ももれなく週10ー15時間程度の Workload はかかりましたが、Pythonで使う基礎的なものから中上級向けの概念にほとんど触れることができます。最後の Final Project では、マルコフ連鎖モデルという今流行りの生成 AI(*テキスト生成技術)の原型とも言えるモデルを活用したコードを書いてみました。具体的には、クリントン、オバマ大統領2人の原稿スピーチをデータとして読み取り、誰が書いたかわからない状態の原稿を見た際にどちらの大統領の原稿に近いかを統計的に予測していくモデルです。Chat GPT は現在マルコフ連鎖とは全く異なる精度・アプローチをとっていますが、ある意味そうしたさわりの部分に触れられるのもこのプログラムの醍醐味ではないでしょうか。

・Discrete Math(離散数学)

シンプルに離散数学を学んでいく授業で、アルゴリズムに向けた導入科目になります。内容としては理論・証明、組み合わせ理論、グラフ理論等。

・Algorithms(アルゴリズム)

CS の必修のクラスのうちの1つです。学ぶトピックとしては、並び替え、最短経路の算出、ダイナミックプログラミング、分割統治法、ネットワークフロー問題、P/NP 問題 etc.など多岐にわたります。例えば Google マップなどに使われる始点から終点までの最短経路探索やSNSでのネットワーク探索(友達おすすめ機能?)などは授業で習う様なアルゴリズム等がベースとなっています。その他にもネット上でのオンラインストアへの送客の仕組みや、様々なアプリケーションに使われているコンセプトを理論ベースで学び、そのアルゴリズムの計算量や効率的な計算、正確性の証明などを学んでいきます。 

2年目以降は以下のクラスを履修することでより実践的な内容を身につけてきたいと考えています。また余談ではありますが、シカゴ大学は量子コンピューター(Quantum Computing)領域の研究が非常に有名らしく、学部の授業ではありますが余裕があれば受講を予定しております。

・Product Management

・Intro to Computer Systems

・Database

・User Interface and User Experience Design

・Big Data Application Architecture

 

長々と1年を通じた所感と授業の学びについて記述してみましたが、如何でしたでしょうか。Dual Degree にご興味をお持ちの方でさらに詳しく知りたい方は、是非お問い合わせください!


ChatGPTとMBA

Class of 2024(1年生)のTです。

みなさんはChatGPTを使っていますでしょうか?

最近、ChatGPTを含む生成AI(Generative AI)と呼ばれる分野に夢中になっていまして、これをメインテーマに残りのMBAを過ごそうと考えています。このブログ記事では、ここまで約半年間の学校生活を生成AIをテーマに振り返ってみようと思います。

1. 生成AIとChatGPT

生成AI(Generative AI)というのは文字・画像・動画などを創作ができるAIで、その代表例が、今話題になっているChatGPTというOpenAI社が開発した万能チャットです。何が凄いかについては、ChatGPTを触ってみるのが一番ですが、技術面にも興味がある方はこの辺を読んでみるといいと思います。

https://note.com/kajiken0630/n/n8a1c33271280?fbclid=IwAR3f9ywyIr1cJWvw9Gq4z8nRQiorAHnOoTZn3hOcoiQMJcEAK1ugKEbycGY

MBAの周りの学生を見ていると、プログラミングのサポート、文章・英語の校正、アイデアの壁打ち相手などの使い方をしている人が多く、かなり浸透しています。余談ですが、宿題でChatGPTを使うのは基本的に禁止されているのですが、「ChatGPTを宿題で使うことを推奨する(ただしどう使ったかは明記)」というポリシーの授業もあり、AI分野を専門する教授は、活用に積極的な印象です。

2. なぜ生成AIに興味を持ったか

もともと日系の金融機関でフィンテック関連の新規事業開発を6年ほどやっており、AI技術を使ったプロダクトのPMなどもしておりました。仕事でAIを扱う中で、一度は変化が起こっている中心に飛び込んでみたくなり、また技術面でも一度学び直しをしたいと考えていました。当初データサイエンスのプログラムなども検討していたのですが、やや内容・コミュニティが専門的になりすぎる感覚があり、最終的にMBAにし、プログラムがフレキシブルで学びたいことを自由に学べるChicago Boothを選びました。

一方で、入学後にインターンを探し始める中で、AIといっても、クレジットスコアリングから自動運転まで、あまりにも幅が広いことに改めて気づきました。そこで冬休みを利用してNeurIPSというAI分野の学会に参加したのですが、生成AIのコアにあたるTransformerという技術一色で、それに対して何千という研究者が日々問題解決に取り組んでいるという現実を目の当たりしました。折しもNeurIPSに合わせてChatGPTがリリースされ、明らかにドッグイヤーに突入しており、自分が過去経験したフィンテックブームとも比べ物にならない規模の「何かとんでもないことが起こっている」という感覚で、これしかないと思った経緯です。

3. 生成AI関連の活動

Chicago BoothにはPolsky Center(イノベーションを支援する組織)が主催するNew Venture Challengeというアイデアのピッチコンテストがあります。主に2年生が応募しているのですが、同級生+同級生の知り合いのエンジニアの合計7名でチームを組んで生成AI分野のアイデアで応募することにしました。結果的にNew Venture Challenge自体の選考には漏れてしまったのですが、Polsky Centerの別のプログラムに合格してプロジェクトを継続しています。MBA的には少し珍しい全員コードが書けるというチームなのですが、自分も毎日ひたすらコードを書いていて、何かしらの形で公開もできればと思っています。

プロジェクト以外では、Booth AI Groupのクラブの運営をしています。活動内容ですが、例えば来月にJ.P. Morgan AI Researchを招いてイベントを実施します。Center for Applied Artificial Intelligence、Data Science Instituteなど学内でもAI研究を促進するための組織がいくつかあり、教授などとネットワーキングをしつつ、興味分野であるAIの倫理・安全性などのイベントを開いていければと思っています。

4. 授業

Chicago Boothのカリキュラムは必修の代替、選択科目、他学部聴講などが非常にフレキシブルなのが特徴です。生成AIというテーマに沿って、少し紹介したいと思います。

(1) 冬学期の授業(MBA)

生成AIの本質を見極める意味でも、世の中がパラダイムシフトを迎えているような局面について考える時間を増やしたいと思い、冬学期はイノベーション史、気候変動、フィンテック、競争戦略の授業を履修しました。というのも、生成AIに惹かれた理由の一つが、色々な意味でパラダイムシフトを起こしているからで、例えば、従来のAIでは自社固有のビッグデータを蓄積してモデルを開発するのが中心だったのに対し、生成AIではOpenAIなどが開発する巨大な汎用的なモデルを自社の用途にうまく転用していくことが重要になってきています。

印象的だった話としては、例えばイノベーション史(Business in Historical Perspective)の授業で、Body of knowledge(体系的な知識)とTinkering(実験的な創意工夫)の二つがあるという議論があります。19世紀の産業革命期には体系的な知識を必ずしも持たない野心的な個人発明家によるTikeringが大きな役割を果たしていたとのことでした(例:Charles Goodyearは化学の素人だったが、試行錯誤の末、ゴムの加硫法を発明)。なぜこれが生成AIと関係していると感じたかというと、この分野の全体的な傾向として「試行錯誤でやってみたらうまくいくが、なぜそれがうまく動いているのか不明」といった中で物事が進んでいるからです。特にChatGPTのような言語モデルの振る舞いは試行錯誤を通じてしかわからない部分が多く、モデルの活用においては裾野が広い個人・企業のTinkeringを通じてブレークスルーを起こしていく局面にあるように思いますし、またこの分野で出遅れ気味の日本にも挽回のチャンスがあるかもしれません。

MBAの授業内容に何か正解を求めると期待外れに終わることもあるかもしれませんが、自分の興味の軸さえあれば、重要なインスピレーションを確実に与えてくれるように感じています。興味の探索に時間を使いたい1年目からこういった授業をとれるのは非常にありがたいですし、毎学期の履修登録を通じて自分が次の学期やるべきことを明確にする、というのもフレキシビリティのメリットとして感じています。ちなみにイノベーション史は必修のミクロ経済の代替科目で、Boothでは必修とされる科目であってもかなりフレキシブルに振り替えられます。

(2) 春学期の授業(他学部)

春学期はMBAの授業に加え、コンピューターサイエンスの大学院のセミナークラス2つを受講しています。一つはSelf-Supervised Learning(自己教師あり学習)という生成AIの背景になっている技術について扱うもので、もう一つはHuman-Centered Machine LearningというAIの安全性・倫理や人間とAIの協働(Copilot・Human-in-the-loop)について扱うクラスです。ちなみに担当教授の許可さえあれば、シカゴ大学の全学部のどのクラスでも受講でき、時期の縛りもありません。

技術的なキャッチアップも留学の一つの目的でしたが、最新の論文を読んで教授やその分野を専攻している学生などと議論する機会が得られるのは非常に貴重な経験です。最終課題のリサーチペーパーは、(過去に出題された)MBAの課題を講義スライド・ケースの情報に基づいて解くプログラムを開発して、性能を評価するというテーマで教授にアドバイスを受けながら書いています(と、書くとやや大袈裟ですが、要はChatGPTにうまく問題を解かせる指示方法を見つける、みたいなことをやっています)。生成AIの応用の観点で眺めると、MBAの課題はビジネスの箱庭的な要素があり、AIで現実の問題解決を行なっていくにあたっての橋渡し的な目標として非常に興味深いです。また、ビジネスをサイエンスとして捉え、理論・フレームワークを重視するChicago ApproachはAIを活用した意思決定に非常にフィットしているようにも感じています。

5. シカゴ大学のイベント

MBAに限らず大学では毎週のようにAI関係のイベントがあり、今週はアルゴリズムの政策への応用について公共政策大学院のJens Ludwig教授によるランチセッションがありました。「自分の30年の研究者キャリアの中で因果推論、行動経済学が2大革命だったが、生成AIは間違いなく3つ目の革命になるだろう」とのことでした。 また今日は、OBの方のご厚意で、Chicago Booth主催のManagement Conferenceというイベントに参加するチャンスがあり、Keynote ConversationではなんとMicrosoftのSatya Nadella CEO(BoothのAlumni)が登場し、AIの未来についても言及がありました。印象的だった話としては、「今後30年を通じて地球上の80億人の生活レベルが劇的に向上するだろうし、それは間違いなくAI+他の何か(気候変動、量子コンピューター、AR/VR, etc)によって達成されるだろう」というものでした。今後、生成AIが他の領域と相互に影響しながら、想像もつかない形で社会にインパクトを与えていくのが楽しみですし、冬学期に履修していた気候変動などの授業も、もしかしたら何かしらの形で生きるのかもしれないと感じました。

少し長くなりましたが、2年間でAIをいろんな角度から突き詰めたいという少し変わったモチベーションでMBAに来たのですが、Chicago Booth MBAのプログラムの最大の特徴であるカリキュラムのflexibilityのおかげで、充実した日々を送れています。何か深掘りしたいテーマがある方は、Chicago Boothがオススメです!

Japan Trekについて

こんにちは、Class of 2023のWです。春休みにJapan Trekを実施しましたのでそちらについて紹介させていただきます。

Japan Trekは、コロナ前は毎春休みに開催されていた恒例トレックでしたが、パンデミック後は開催できない状況が続いていました。しかし、2022年10月から外国人の新規入国制限の見直しが行われたことにより、Japan ClubのCo-Chairたちで再開の議論を始めました。また、周りの学生からも多く問い合わせをもらうようになりました。友人たちの日本への関心の高さを実感し、この学生生活で色々と助けてくれて、また、新しい世界をたくさん見せてくれた同級生に恩返しがしたいという気持ちからトレックを開催しようと決めました。

今回はコロナ直後というイレギュラーな状況下、かつ、コロナ前のトレックサイズの2倍以上となる160名という大規模なトレックだったため、ゼロベースで企画を行いました。非常に準備が大変でしたが、それだけの労力に見合ったかけがえのない経験になったと思います。

スケジュール

トレックのスケジュールは下記の通り進めました。

トレックの様子

ハイライト

2日目 京都(清水寺)

3日目 奈良(東大寺)

4日目 広島(大宴会)

5日目 広島(宮島)

7日目 東京(屋形船)

振り返り

終わってみて開催して良かったと思う点がいくつかあるのでお伝えしたいと思います。

1. クラスメートへの恩返しと最高の想い出

冒頭にも書きましたが、Japan Trekを開催した理由はクラスメートへの恩返しがしたかったというのが一番大きいです。私は純ドメでMBAに来ていて学業やソーシャルなど色んな場面で苦労することも多かったですが、本当にBoothのクラスメートは優しい人が多く、いつも助けてくれました。また、私が今まで知らなかったような文化や考え方を見せてくれ私の世界を広げてくれました。そんな友達に恩返しするために日頃からpay it forwardの精神をもって生活していますが、Japan Trekは一番のgive backの方法だったと思います。トレックの最中や終わった後に多くのクラスメートから日本は最高だ、今までで行った旅行の中で一番だと言ってもらえて本当にトレックを開催して良かったと思いました。また、みんなにgive backできただけでなく、自分がゼロから企画したトレックでみんなと楽しみを共有することには自分自身大きな充足感を得ることができました。人生で最高の想い出になったと思います。

2. Boothコミュニティにおける認知度向上

Japan Trekを開催したことでほとんどのクラスメートが私のことを知ってくれていると思います。今回、他の大きな恒例トレックをおさえてJapan Trekが最大のトレックになったことで多くの注目を集めました。学内の新聞やブログなどで取り上げられる機会も多く、参加者はもちろん、参加していないメンバーも私のことを知ってくれたと思います。これからみんな卒業して各界でリーダーとして成功していくと思いますが、そんな同級生がみんな自分を認知してくれていることは将来の大きな財産になるのではないかと思っています。

3. リーダーシップやプロマネといったスキルの向上

旅行の企画で得られることなんてあまりないのではないかと思う人も多いと思いますが、実際にトレックを成功させるためにはクラスメートとの信頼/ネットワーク、プロマネ力、ステークホルダーマネジメントなど多くのスキルを求められたと思います。私が特に一番自信になったのは英語でスピーチをするという経験です。私はいまだに授業中の発言やプレゼンも苦手だなと日々感じています。しかし、Farewell Partyで最後にスピーチをしてしっかりと会場を沸かせて、旅で最高の盛り上がりを作ることができたということは自分にとっての大きな自信となりました。

改めてJapan Trekは最高でした。是非この伝統を続けて日本の良さをBoothコミュニティの中で伝えていければと思います。