MBA 2年間の振り返り

こんにちは、Class of 2025 のTです。ちょうど2週間前に卒業式が行われ、無事に卒業することができました。本サイトは、おそらくこれからMBA を検討されている方、あるいは受験準備中の方が多いと思いますので、あくまで非常に個人的な感想ですが、2023年から2025年にかけてのChicago Booth での経験がどうだったのか、私の視点から雑感を共有させていただければと思います。

“Congratulations Class of 2025 Graduates”

結局Opportunity に対してどう取り組むか次第

MBA 受験を検討されている社会人の皆様にここで殊更お話することでもなく恐縮ですが、2年間を振り返ってみると何につけても結局これだったな、と思っています。授業で挙手して発言するか、ケースコンペに出るか、イベント後にスピーカーとネットワーキングするか、リーダーロールを貰った時にどの向き合うか、はたまた誰かの誕生日パーティーに行くか、毎日毎日の機会に対する意思決定の積み重ねが、2年間の価値を大きく変化させます。正直学生であり、妥協しようと思えば色々と手を抜けるのも事実ですし、また学生は学生なりに忙しい(他の課題がある、飲み会が連続する、etc.)のも事実です。ただ、やはり振り返ってみると、印象に残っていることはどれも少なくともしんどさを感じる程度に一生懸命やったプロジェクトやリーダーロールばかりです。Booth は特に学校の特色としてFlexibilityが強調されますが、それが故に入学前から「MBA で何を得たいのか?」「2年間で何をやり遂げたらゴールなのか?」あるいはもっと短期でも「今日何をやりたいのか?」ということを常にある程度明確に持っておく必要がありますし、またそれを(内容は変化すれども)持ち続け、磨き続ける必要があると感じました。

私は2年目に、Booth のキャリアフォーカスグループの一つでCo-chair をやりました。数十人から100人程度の1年生に対して、教室で毎週レジュメの書き方やインタビューのコツなどを私一人、ないし2−3人のリーダーでレクチャーするのは、特に海外経験がない私にとっては非常に苦痛な経験でした。しかしながら、海外からの学生の視点で、同じような境遇の人に対してカリキュラムを考え手厚いサポートをできたことは、今から振り返ってみると非常に貴重な経験でした。キャンパスでも面識のない一年生から声をかけられることも多々あり、内定が決まったことを報告してくれた際には、彼らの役に立った、というやりがいと、また(もちろん会社と学校では違いますが)海外でもリーダーシップを発揮できるという自信を得られたことは、自分のキャリア・プライベートともに大きな収穫になりました。もちろん、振り返ってみると、正直獲り逃したBooth のOpportunity もたくさんあり、もっとできることがあったとも感じますが、それだけMBA/Booth がたくさんの機会を提供してくれており、主体性を持って取り組めば得られるものはたくさんあるということでもあると思います。

就活は制御不能な部分が大きいが入学前の経歴が非常に重要

各校のMBA 在校生の皆様が就活については色々インターネット上でご共有されていますので、ご自身が進まれたい業界の就活については、ぜひそちらを参考にされるのが良いと思います(本サイトでもテックについては今年取り上げています)。コロナ禍からここ数年は、インフレ、生成AI、ビザ関連の政治の動向などによって毎年目まぐるしく就活の状況は変化しており、これから受験される方にとって2026年、2027年の採用状況がどうなっているか予測することはほぼ不可能、また予測できても打ち手がないと思います。ただ、その中でも私が特に強調したいのは、MBA 入学前の職歴が極めて重要だ、という点です。

MBA に行かれる目的として、キャリアピボットを挙げられる方は多いと思います。もちろん現在でも、テックからファイナンス、ファイナンスからコンサルなど、通常の転職活動では難しいキャリアチェンジを成し遂げた方はいらっしゃいます。ただ、将来の不透明性が増す中で、「即戦力として働けるか」という点をみる企業が増えていることは事実だと思います。私のBooth の友人周りですと、IBからPE、Tech でもストラテジー職からプロダクトマネージャーなど、前職の経験をレバレッジしてサマーインターン・フルタイムロールを獲得するケースが非常に多かった印象があります。これからMBA を受験される皆様には、MBA の在校生・卒業生にリーチアウト(あるいはLinkedInのプロフィールを確認)して、どういうパスで行けばドリームロールに辿り着くのかの解像度を上げ、可能であれば日本ないし現在働いていらっしゃる場所で類似の経験を得ることで、入学後のインターン・フルタイム選考の特に書類選考の通過確率を上げておくことをお勧めします。

人間としても一回り磨かれる

就活の話をしましたが、打って変わって、自分の内面も鍛えられた、という点もMBA で得られた大切なものの一つです。特に海外経験が少ない私のようなバックグラウンドの場合は、気候・常識・言語が異なる海外で住むことへの疲れ、就職活動が思うように進まないという焦り、周りを優秀な人に囲まれグループワークで自分が話す隙がないイライラなど、普段の仕事とは一味違うストレス因子に囲まれました。MBA でよく「ソフトスキルが得られた」という話がありますが、その中でも私は特に、こういったストレスフルな環境でどのように物事を進めていくのか、という胆力がこれまでよりついたと感じています。家の不具合が何日も修理されない中で粘り強く交渉する、あり得ないほど時間がかかる行政手続きをスムーズに行うハックをネットで見つける、友達に頼み込んでモックインタビューをやってもらう、全く知らない他国のパーティーに参加して踊る、文化の違う友人に自分が不愉快に感じることをソフトに、でも効果的に伝えるなど、これまでの引っ込み思案な私では考えられなかったことが、気づいたら特に(ほぼ)苦痛なくやれるようになっていました。日本の慣れ親しんだ環境では得られなかった人間的な成長を日々得られた、これも2年間を振り返ってみれば確かにMBA で得られた収穫です。

周りも含めて私生活も変化する

人生で初めて2年もの間日本を離れていたので、それに伴って起きる変化も様々あります。私の場合は、MBA 期間中に父親が手術を行いました。幸い手術は成功裏に終わりましたが、私がMBA 1年目と2年目の間の夏休みに日本に帰国したところ、父親に以前あった覇気が全くなくなってしまっており、非常に悲しく、衝撃を受けました。シカゴから東京には直行便も出ていますし、予算を気にしなければすぐ帰れるとはいえ、遠く離れた地で2年間生活するということは、その間親・友人など多くの人とは会いづらくなってしまいます。MBA での自分の変化もありますが、日本にいないことによって繋がりがある多くの人と会う機会はどうしても減ってしまいますので、渡航前に多くの方と会っておく、電話・LINEなどで意図的に繋がりを維持しておくことは重要だと感じました。

また、これは渡航前の話になりますが、パートナーの方と結婚するか、お子様がいらっしゃる場合はその教育をどうされるか、パートナーの方といらっしゃる場合はその方のキャリアはどうされるか、などなどMBA にいく前に検討しないといけない事項もたくさんあります。MBA に受かってから検討する、という方も多いと思いますが、特にRound 2 以降の場合、VISAプロセス、家探しなど様々なタスクがあり、合格が決まってから検討できる時間は意外に多くないので、受験の段階から将来についてはステークホルダー全体で計画的に話し合っておく必要があります。

一方で、私の場合は非常に明るい出会いもありました。MBA 1年目の終わり(夏休み)から同じ業界を志望するクラスメイトと付き合い始め、卒業後も同じ地域で仕事を見つけることができました。色んな意味で異なるバックグラウンドを持っており、どんなことでも常に自分にはない視点をもらえる素晴らしい人に出会えたことは、まさに個人的には人生を変える出来事になりました。実際Booth 学内では10組以上のカップルが誕生しており、(あまり受験生にはフィーチャーされないものの)まさにMBA でしか得られないものの一つだと思います。

最後に:MBA は必要か

結論は常に人による、ということにはなるのですが、MBA が何かのゴールドチケットである時代はかなり前に過ぎている、という意見も正しいのかもしれません。政権の意向によっては将来のアメリカでの就労についても容易に不安定化しますし、円安と米国のインフレの中で投資費用も高騰しています(先日この2年間の総出費(MBA 受験費用は含まない)を計算しましたが、一部奨学金で授業料がカバーされていても総出費は2年間で2,900万円を超えていました)。しかしながら、今この段階では、2年間の働いていた場合の金銭的・時間的機会費用を加味しても、ここまで上記に書いたような収穫によって、このMBA は私の人生にとって大きな価値をもたらしたと考えています。

ここまで色々書きましたが、結局のところ「何となくでもMBA という機会に心が踊るか」というところに尽きると思います。心がMBA に向いているのであれば、全力で準備に力を注ぐことができると思いますし、その気持ちがあれば、MBA が2年間に与えてくれる機会をフル活用して、MBA ライフを私以上に有意義なものにすると思います。

最後に一言だけ、シカゴブース、本当にいい学校でした。皆様の挑戦を応援しております!それでは!

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