【寄稿】VC視点でのMBAの価値とBoothのユニークネス

皆さん、こんにちは。Class of 2021のT.Kです。

今回は、Class of 2019で、現在VCとして働かれている原田さんより、記事を寄稿頂きました。MBAで得られた経験、その中で感じられたこと、またBoothについて、などなど、非常に盛りだくさんな内容です。

ぜひ、ご覧ください。


MBA卒業からもうすぐ一年が経ちますが、実務に戻り転職してVCとして働く中でMBAの価値を実感することが多々あります。VC実務の視点から、MBA前後の自分の変化、実務で感じるMBAの価値、そしてChicago Boothのユニークネスについて、まとめてみたいと思います。

MBAを目指したきっかけと、前後の変化

学生時代からVCキャリアには漠然とした憧れがありましたが、新卒で外資コンサルに入社した後は目の前の仕事にかまけてキャリアの具体イメージや目標が深まっておらず、MBAの2年間をつかってキャリアについて考えを深めたいと考えていました。実際に、学校や活動が始まるとキャリアに対する考えを深める機会はもちろん、スタートアップやVCのメンバーとして働く機会など、期待以上の成長の機会に出会いました。VCキャリアが一気に実現味を帯びたとともに、自分がVCとしてどのように成功したいかのイメージが湧き、ネットワーク・スキル両面でVCとして働くための基盤を築くことができました。

私にとってのMBAの価値

VCは本来ローカル市場で会社に投資しその成長を支援する仕事であり、留学前に自分のキャリアとしてイメージしていたのも日本国内を中心に活動するVCでした。一方でMBA中に関わったVCは、投資スコープや評価の視点をローカルに限定せず、グローバル視点で最良の探索、評価、投資をしており、VCの働き方について考えを深める機会になり、自分自身もグローバルスケールでイノベーションを生み出すシーンにVCとして携わりたいという目標になりました。働く場所に関わらず、世界の投資コミュニティにも認識される投資をしたいと感じるようになったのは大きな変化だと感じています。

行動レベルで大きいのは、事業評価において日本市場を客観的に見ることが自然に行えるようになったことだと思います。MBAで日本を外側から見る経験を通して、市場環境を一つの変数として捉え、この事業がグローバルで勝てるか?と考える癖がつきました。また、MBA生活や現地企業で仕事をする経験を通じて、コミュニケーションのスタイル・お作法などもブラッシュアップされ、アメリカ人や多様な国籍・バックグラウンドの人達と働くことが自然になりました。結果として、自分から積極的に海外との接点を増やして仕事を作ることや、グローバルのネットワークを活用して国際的に仕事をすることが自分のなかでも自然動作になりました。

仕事をする中ではMBAを通して知り合った人たちとのネットワークにも支えられています。MBAを通して繋がりを持つことができたヘルスケア・VC業界のリーダーたちとは、卒業後日本のVCで働く中でも接点があり、情報収集や投資案件を探す際にMBA時代にできたネットワークから紹介を受けたり、逆に紹介したりすることもあります。VCは協業先を探す際にも、個人個人のネットワーク・ブランドが必要になるため、MBAを通して国外の強いネットワークにアクセスできるのは大きな価値として感じています。

より実務的な面では授業で学んだ知識が思った以上に活躍しているという実感もあります。基礎レベルではそれまで実務経験がなかった会計財務分野を一通り学べたため、投資先やVCファンドそのものを会計的・財務的に分析する際に勉強内容がダイレクトに役立っています。また応用レベルの学びとしては、VCファンドのポートフォリオのリターン構成やLPタームのあり方など、各VCによって考え方・哲学が異なり、かつパートナー級しか知らない(かつネット等にも殆ど情報がない)知識を得られるのも実効的かつ貴重な学びだと思います。

上記を少し抽象化・一般化してみると、MBAを通してグローバルでのキャリア意識が生まれ、自分からProactiveにキャリアを築き上げる準備ができたという変化があったのだと思います。VCをキャリア目標としていたため上記をVC目線で感じることになった訳ですが、別のキャリアを目指していたらそのキャリアに合った形で、しかし抽象的なレベルでは、やっぱり同じことを感じ学んだのではないかとも思います。とするとMBAの価値の極論的な一面としては、日本の枠を超えて成長したいというミッションに答えてくれるプログラムということなのかもしれません。

Chicago Boothのユニークネス

MBAはどの学校でも基礎科目の構成はほぼ同じですが、授業の教え方や教授の質、卒業生ネットワーク、また各産業との接点には学校による強み弱みがあります。Chicago BoothはFinanceに強みがあるため、VC関連でユニークな機会の恩恵を受けることができました。

授業面では、PE Financeを教える教授は、現在のFinance理論を作り上げ、かつ現産業リーダーを育ててきた実績を持つ人たちで、ゲストスピーカーにも業界リーダーを連れてくることができます。VCの世界では、例えば投資評価の方法ひとつとっても、様々な流儀が存在しており業界としての絶対解が存在しないため、業界リーダーにハイスタンダードな手法を教えてもらえるのは、即戦力な価値です。

産業との接点という意味では、Boothの場合シカゴ市内で唯一のトップMBAスクールであるため、シカゴ内の目ぼしい企業はたいてい強いパイプがあります。就職倍率が高くコミュニティの中に入らないとネットワーキングすら出来ないVC/PE分野では、学校と企業のパイプが太いのは、インターンの機会を見つける上で非常に大きなメリットです。また、上記とも重複しますがVC/PEセクターで活躍するアラムナイが多くアクセスが容易である点も大きな強みです。授業や学校のイベント、またインターンを通して、業界の大物と知り合いになれる機会はBoothのユニークネスだと思います。

上記のように多様なリソースがあっても、時間がなければリソースを活用することはできません。ユニークなプログラムを存分に活用できるように、カリキュラム設計にも圧倒的なフレキシビリティがある点も、ユニークネスの一部の重要な点です。

少し違った視点では、トップスクールとしてのプレミアも、現地でPrivate sectorで就職を目指したり、仕事をしたりする上では無視できない要素になると思います。現地のVC/PE就職は一般的に非常に熾烈で競争倍率が高くトップスクールのMBAが最低要件になることも少なくありません。また、現地コミュニティと仕事上の接点を持つ際には、トップスクールのプレミアが個人としての信頼を与えてくれる場面も多々存在します。

総括

Chicago BoothもそうですがMBAには様々なチャレンジの機会が溢れており、世界屈指の教授から教科書の裏側を学ぶ、新事業を起こす、アメリカの第一線で活躍する企業で経験を積む、卒業後も続いていく人脈を形成する、など様々な活動が可能で、この中でどのような活動、経験をしていくかは、個人個人の自由選択になり、価値として認識する部分も少しずつ違ってきます。

このように三者三様のMBA生活・価値ですが、どのような学びをしても、将来のキャリアにポジティブなインパクトがあるのは間違いないと思います。日本からアメリカにMBA留学する人の数は近年減少傾向ですが、MBAを活用してキャリアップされる日本人が増えることを願っています。


いかがでしたでしょうか。

より詳しい情報は、原田さんのnoteがございますので、ぜひそちらもご覧ください。