こんにちは、1年生のTHです。みなさんいかがお過ごしでしょうか。シカゴは冬まっさかりで、シカゴ川が凍っています。今年は例年以上の寒さとのことで、日によってはマイナス20℃くらいの日もあります。一方で、雪は少ないので、交通に支障が出たりしないのはいいところです。
さて昨年末にHealthcare trekに参加してきたので、内容をレポートします。
各プロフェショナルクラブが年に1回程度、リーディングカンパニーを回るTrekを開催しますが、BoothのHealthcare trekは秋学期終了後の12月半ばに行われています。同じタイミングで、Tech trekもあり、そちらはマイクロソフト、Amazon、Googleなどを訪問したとのこと。
Healthcare trekでは、13社を訪問してきました。Healthcare trekの目的はリーディングカンパニー、イノベーティブカンパニーを訪問し、先端の技術や事業について学ぶというラーニングの機会で、各社で対応してくれた役員の方たちも非常に丁寧にテクノロジーについて説明してくれました。
初日はシアトルに滞在し、創薬系の会社を訪問。はじめにCascadian Therapeuticsというがん領域でPhase3のパイプラインを持っており規模として60人程度の会社。Cascadianは既にPhase3を終えて上市承認申請の段階に差し掛かっており上市に向けた営業機能の拡張をしているため会社的には非常に忙しいタイミングにも関わらず、CEOのScott Mayersが卒業以降疎遠になってしまっていたChicago communityともう一度繋がりたいという強い思いを持って歓迎してくれました。(シアトルでの他の会社への訪問もScott自らがコーディネーションをして訪問先に話をつけてくれたり、またCasacadianを訪問した際にはManagement teamがほぼ全員揃って我々と2時間程度時間を使ってくれるという歓迎ぶり)CascadianのパイプラインはHER2というバイオマーカーが発現している乳がんのうち脳転移が疑われる乳がん(brain metastatic HER2 positive Brest cancer)を対象としており、既に上市されている抗癌剤とのコンビネーションで用いるという方法での上市を狙っています。がん領域は大企業も含めて新薬開発の競争が非常にシビアなので、ターゲットの適応症を細かく設定して承認を取りにいくという流れの一例ですね。
また、同じくがん領域での開発をしていおり免疫治療のリーディングカンパニーであるJuno Therapeuticsを訪問。Junoは2017年に新しい自社ビルを立てて入居したばかりで、研究環境としても非常によく、ビルの中にもジムがあったり、オープンスペースが豊富で、研究者たちが活き活きしていたのが非常に印象的でした。またJunoと関わりがある他の癌領域のスタートアップやVCもミーティングに参加してくれたため、非常に活気がある訪問になりました。シアトルで近い分野で事業を行っている会社がエコシステムになっており、常に意見交換したり、技術提携も積極的に行っているようです。実際、Junoが使っているCAR-T技術では患者から取り出した免疫細胞を加工して機能拡張した後に体内に戻すのですが、細胞を加工する段階で遺伝子編集や抗原タンパク質の発現など複雑かつ多種の編集過程が必要であり、他社と積極的にコラボレーションし技術を積極的に取り入れているとのことでした。
次の日は西海岸に移り、Intuitive Surgicalを訪問。IntuitiveはDa Vinciと呼ばれる複数の手術アームがついた手術支援ロボットを開発している会社で、Da Vinciは世界各国の医療現場で既に使われています。特に腹腔鏡手術でも届きにくい内部の手術に用いられているそう。デモ機を実際に触らせてもらいロボットを動かすことができたのですが、アームの先についているカメラを通してアームの先の映像を3Dで見ることができ、かつ、非常に直感的な操作でロボットを操作できました。説明してくれたBooth卒業生からは開発段階の苦労(開発当初は外科手術で行う全ての機能をアームに搭載して自動化したものの、ユーザーである外科からのフィードバックを通して、成否を分けるステープリング機能を手動にしたなど)裏話も聞けました。
また、西海岸ではGenentechを訪問することができました。GenentechはSouth San Franciscoというバイオテック企業がクラスターになっているエリア(23andMeやAmgenもあります)に巨大な敷地を持っており、敷地内には大きな自社ビルが10以上あり大学のキャンパスの様にになっています。今回のTrekでは我々はBiologicsの製造施設を見学。巨大な細胞の培養タンクがずらっと並んだ様や、抗体の製造から精製のプロセスが自動化された系として繋がっている様はまさに圧巻。小規模の製造ラインを用いて、製造や精製の効率を上げるための研究も行われていました。
他にもヘルスケアVC、メディカルデバイス会社や放射線照射機製造会社など複数の異なる領域のリーディング企業を訪問することができ、ヘルスケアのイノベーションを自分達の目で見ることができる有意義な訪問になりました。