MBAの価値(1年目を振り返って)

1年生のAです。早いもので、昨年の9月にオリエンテーションプログラムが始まってから9ヶ月が経ち、シカゴでのMBA1年目も終わりに近づきつつあります。入学当初の秋学期に比べて、冬学期と春学期は時間の経過を早く感じ、ああもう終わりかという感じです(2年生によると2年目は時間の流れがさらに早く、夏休みが終わると次の9ヶ月はあっと言う間だそうです)。

さて、春学期が終わると夏休みは長期でシカゴを離れブログが書けなくなるため、今回は少し早いですが1年間を経て今私が感じているMBAの価値について書いてみたいと思います。

1. ブランドを得てとネットワークを作る
ある授業で先生が「あなたはMBAに何のために来ましたか?」と聞いた時、最初に挙手した生徒の答えは「ネットワーク!」でした(その後、先生から「授業でしょ!」とつっこみあり)。しかし、MBAはキャリアアップ(同業界内でのランクアップか転職)のためのプロフェッショナルスクールであり、学校のブランドを得ることで世界で活躍する多様な卒業生や多くのグローバル企業、プロフェッショナルファームへのリクルーティングの切符を手に入れることに大きな価値があるのは間違いありません。この記事を書いている今日も、私は数年前のBoothの卒業生でEducation Technologyの分野で起業をしたファウンダーと少人数でディスカッションをするプログラムに参加してきたところで、このような機会はMBAに在籍しているからこそ得られるものです。また、アメリカは「学校」というコミュニティを大切にするため、卒業後も世界に散って行く同級生や卒業生とのつながりができます。学校としては「いやいや授業にもの凄く価値があってあなたの人生を変えるトランスフォームなんだ」と言いたいと思いますが、おそらく特に多くのアメリカ人にとっては学校のブランドとネットワーキングこそがMBAの最大のバリューだと思います。

2. 自分のキャリアゴールを達成するためにアカデミックにストレッチする
ネットワークにMBAが大きな比重を置いていて一部の学生はリクルーティングさえうまく行けばパーティー三昧なのも確かですか(笑)、もちろん授業もMBAとして大きな価値があります。これは、2年間を使って何を達成したいか、人によると思います。

例えば、私は投資銀行出身ですが、MBAでコーポレート・ファイナンスに関する授業を一通り真面目に受ければ、投資銀行のアナリストレベルの知識を身につけて、卒業後にアソシエイトとして働く基礎体力を得ることは可能だと思います。ですので、投資銀行業界に転職したい人がトレーニングとしてMBAの授業を使う、これはひとつの活用法です。コンサルティングやマーケティングなど、他の職種についても同じことが言えるでしょう。

また、例えばヘッジファンドで働きたい場合は、Boothでは先端のファイナンス理論を徹底して体得させてくれる(とても厳しい)授業がいくつかあります。先端の教授達の弟子になり、このように、もともと自分が経験のある分野で突き抜けるためにMBAを使うことも可能だと思います(これはフレキシブルなBooth特有の側面がもしかしたらあるかもしれません)。

もう少しジェネラルに言うと、MBAの授業の価値は、一通り引き出しができること、そして様々な国籍、性格の学生の意見を追体験できることにあると思います。

戦略、オペレーション、ファイナンス、マーケティング、統計などを一通り、レポートを書き、ディスカッションして学んでいくと、実際にビジネスの現場で問題にぶつかった時に、何かしらのとっかかりが自分の中にある状態になっていると思います。とっかかりがあればそこから深めて行けるが、何も知らないと深めて行くのは難しい、そういう意味で一通りの引き出しを作ることは広く浅く学ぶことの意義と言えるでしょう。

もう一つの様々な学生の意見を追体験できること、これは忘れてはならないバリューだと思います。今学期、私は交渉の授業をとっており、授業中に学生はグループに分かれて必ず交渉のシミュレーションをするのですが、自分がしたのと同じ交渉を他のグループがどのように感じ、進めていったかを議論するのはとても勉強になります。様々な学生とともにクラブ活動などをして見えてくるのとはまた違う、ビジネスに近い文脈でクラスメイトの考え方を追体験できるのは非常に興味深く、将来様々な国籍の人と働く時に相手の考えていることを想像するヒントとして多いに役立つと思います(特に、ラテン系の人々の交渉術や対人感覚には驚かされます)。

3. 学んだことを実戦で試してみる
長くなってきたので以後は駆け足で。話を聞いたり、授業を受けたりするだでは飽き足らず、自分が関心のある分野にリスクフリーで挑戦できるのもMBAの良さでしょう。私は1年目をこの分野にはあまり使わず、2年生時に集中的に取り組む考えですが、シカゴの企業やシカゴに進出してくる企業へのコンサルティング、ベンチャーキャピタルで授業としてパートタイムインターン、New Venture Challengeでハンズオンで指導を受けながらビジネスプランコンペ、NPOやパブリックスクールへのコンサルティング、テクノロジー分野でのコンペなど、この手の機会には事欠きません。これらは学生にとってはトレーニングでもあり、受入先等と深くネットワークを張る機会でもあり、自分がその分野や仕事に興味を感じるかを試す機会でもあります。

4. ソフトスキルを鍛える、グローバルな同級生から学ぶ
今では(苦労はまだあるものの)だいぶ慣れましたが、グローバルな同級生とのコミュニケーションやディスカッションはそれ自体が本当にカルチャーショックでした。特に、ランダムウォークに参加した時、他は全員がアメリカ人の中で唯一の英語がいまいちな日本人としての苦労と言ったら、、。今でも当時トリップリーダーとして親切にしてくれた2年生のアメリカ人達には頭が上がらないわけですが、そんなことから始まってインド人、中国人、韓国人、シンガポール人、メキシコ人、イスラエル人、(標準的な日本人よりもずっと!)真面目な人、本当に適当な人など、全く書き尽くせませんが彼らとのコミュニケーションは日々勉強です。彼らと、利害関係のある仕事ではなくて、対等な学生としての立場で本音で付き合える、これは間違いなく大きな財産です。

5. 自分を見つめ直す
さて、これらすべてをひっくるめて、MBAには自分探しとしての価値が大きくあると思います。30歳のおっさんが自分探しとは笑わせる感じですが、仕事を離れて利害なく自分で選択ができる機会というのはもの凄く貴重です。自分がこれから10年20年で何を成し遂げたいか明確ならばよいですが、そうでないならば、様々なスピーカーイベントに足を運び、友人達と話をし、授業の準備をし、様々なプロジェクトにチャレンジする中で、自分が本当に関心のあること、自分に向いていることが少しずつ見えてくるのではないかと思います。社会人経験を経た上で、もう一度自分のことを見つめ、同じように進路について悩む友人と語り合う、人によってはこれがMBAの一番の意義かもしれません。(私見ですが、30代、40代でやりたいことが100%明確で、やりたいエリアで今バリバリに働けている人は、MBAに来る必要はあまりないと思います。もちろん、プロフェッショナルファームで昇進のためにMBAが必須という話なら別ですが)

まとめ
いろいろと書いてみましたが、こちらに来て実際にMBAを体験するまでは、「英語で議論ができるようになって、経営に関する知識を授業で学んで、MBA後は過去のキャリアに英語を組み合わせて日本で○○ができたらいいかな」ぐらいにしか考えていませんでした(エッセーにはもう少しカッコよく書きましたけれども)。しかし、今見返してみると、日本にいる時にMBAでやりたいと書いた内容は、MBAのリソースのほんの一部にしか触れておらず、恥ずかしいです。これから受験される方は、自分の志望校(もちろん、Boothも!)の方にしっかりとヒアリングし、これまでの自分の経験とMBAのリソースをレバレッジして、自分が実際にやっているところが目に浮かんで見えるような大きな志をエッセーに書くことをお勧めしたいと思います。また、BoothでのMBAの実際を知っていただくために、私たちはホームページとブログを作り、キャンパスビジットにも積極的に対応させていただいています。Boothを訪れる方は、ぜひ当ブログの連絡欄からご連絡下さい。シカゴでお会いするのを楽しみにしています。

それでは、皆さん良い夏をお過ごし下さい!また秋が近づいてきたらお会いしましょう。