学校と家の往復にならないために

二年生のKSです。皆さんは、MBAでの2年間に何を期待されるでしょうか?勉強、ネットワーク、キャリアチェンジ、そして旅行やパーティー、といったところでしょうか。実際、私も留学する前の漠然とした計画は、そんなところでした。そして実際、ビジネススクールの1年目だけでも、これらのことは十分すぎるほど体験できました。

しかし、2年目を迎えた今、「ビジネススクールと家を往復するだけの2年間で本当に良いのだろうか?」という問題意識を持っています。確かに、ビジネススクールには、2年間の知的好奇心を満たすだけのリソースに溢れています。しかし、30歳前後の貴重な2年間をビジネススクールだけで過ごすには、少々勿体ない気がしています。特に、シカゴという、アメリカの文化的支柱となる都市には、学校では学べないリソースがあり、これらを利用しない手はないと思います。

シカゴの魅力として、建築や交響楽、スポーツなどは良く触れられますが、これらは色々な投稿で指摘されているので、私の経験したユニークなものを挙げてみます。

①演劇
シカゴは、アメリカにおけるコメディーや演劇の中心地としても有名です。アメリカ人のホストファミリーに聞いた話では、シカゴで修行し、シカゴである程度認められたコメディアンがNYそして世界に飛び出していくそうです。世界で最も影響力のある女性の一人である、オプラなどはその典型といえるかもしれません。

こうした背景から、シカゴには演劇学校が沢山あり、一部は社会人や一般学生にも解放されています。演劇は、「言語」と「表現」という非アメリカ人が最も苦手とする分野であり、実際生徒もアメリカ人が殆どなので、日本人にとっては非常に高いハードルですが、非常に個性的で面白い人が多いですし、プレゼンなどにもきっと役立つと思うので、挑戦してみる価値はあると思います。

また、フレンドリーな人が集まっているので、クラスの合間で話したり、飲みに行ったりすることで、ビジネススクールにいる人たちとは明らかに違った、アメリカ人の友人を作ることもできます。

②語学
以前の投稿にもありますが、帰国子女でも無い限りビジネススクールでの2年間だけでは、英語力は伸びません。たとえTOEFLで110点近いスコアがあったとしても、それ相応の努力と時間をかける必要があります。私もシカゴで英語の学校に通ったりしましたが、日本での英語学校に比べると先生のレベルが高いですし、値段も安いので利用しない手はないと思います。

こちらでは教育言語学が発達しており、Grad School of EducationやTeachers’ Schoolを出た方がかなりいるので、個々人の癖やレベルにあわせた適切なアドバイスを受けることが可能です。アメリカに10年近く滞在している人ですら、英語で苦戦している姿をみると(日本人のそれよりは遥かにマシですが・・)、本当に世界で通用するためには並々ならない努力が必要だと思います。

私は加えて中国語の授業を夏学期に受講しました。こちらもPhDの学位を持った教授が1ヶ月みっちりと中国語を教えてくれる、という贅沢なものでした。また、夏学期ということもあり、純粋に興味本位で受講している高校生から、中国語の話せないチャイニーズアメリカン、中国株で一山当てたいと考えているファンドマネジャーまで、様々な人が受講していて面白かったです。(ただし学費はメチャクチャ高かったです・・)

③宗教

私自身はAgnosticであり、あまり理解できていない分野ではありますが、アメリカや世界を理解する上で、宗教に対する理解は不可欠だという気がしています。実際生活してみて、アメリカにおける様々な行動様式や問題が、宗教的背景によって引き起こされている事実を目の当たりにしました。アメリカにはキリスト教やイスラム、ユダヤ教といった様々な宗教が並立しており、これらは直接的にせよ、間接的にせよ、彼らの価値観に大きな影響を与えています。シカゴ大学自体も、他の多くの名門大学と同じく神学校に端を発しており、聖書輪読会などが行われていますが、Agnosticであれば大体参加できるので、そうした場に足を運んでみるのも一つかもしれません。(未だ実行できていないですが・・)

こうして、ビジネススクールの外のものに参加してみると、良くも悪くもビジネススクールという場が特異な場所であることに気づかされます。毎週ヨガに通っていますが、日本では女性が中心であるヨガが、アメリカでは男性にもポピュラーであったり(金曜の夕方のレッスンなどは男性ばかりだったりします)、一歩ビジネススクールから出てみれば、日常の一コマですら、発見に溢れています。

特に留学生にとっては、ビジネススクールで学ぶことだけが留学の目的だとは限られません。学校を飛び出して、アメリカという国を体感し、非常に複雑な民族構成、多用な価値観を理解するのも良い経験になると思います。シカゴという都市は、アメリカの文化的支柱ということもあって、様々な側面を有しており、1年経った今でもその魅力を感じています。