自由度の高い授業環境: 2019 Spring Quarter
皆さん、こんにちは!Class of 2020のH.Mです。
11月と2月にClass of 2020の日本人14人が、実際にどのような授業を履修しているかを投稿しました。今回は、2019年Spring Quarterの実際の履修状況をお伝えできればと思います。
以下が履修科目の一覧です。各授業の分類については前回の投稿をご確認ください。
Boothの学期も3学期目となり、それぞれが思い思いの授業を履修しているのがよく分かります。いくつか特徴的な授業について実際の履修者に聞いてみましょう。
Impact Investing
以前もレクチャー形式では存在したようですが、Lab(実践)形式としては今年から新たに始まった授業です。受講者はapplicationによって選ばれ、5-6人1組で、実際の企業や組織をクライアントとしてプロジェクトを行います。私の場合は、クライアント(大学)が近隣の貧困地域の発展を支援するため立ち上げたファンドの運用戦略を提案するプロジェクトに入っています。
チームプロジェクトは基本的に授業時間外に行い、授業はimpact investingの意義やフレームワークに関するレクチャー、ケーススタディ、ゲストスピーカー(impactファンドのCIO等)による講義で構成されています。新しい授業ということで、Robert Gertner教授がかなり心血を注いで授業をデザインしてくれているのを感じます。また、Coach/TAとして近隣の impactファンドのCIOとsocial startupのCEOから常にアドバイスをもらっています。
私自身はこれまで履修した授業の中で一番面白いと感じています。以下、オススメpointを列挙します。
歴史の浅い / データの少ない分野を理論的に説明
impact investmentはまだ歴史が浅く、情報を得るのも容易ではないため、構造化されたreadingやケースにアクセスできること自体が貴重です。さらに、教授がeconomics/financeの理論をもとにわかりやすくフレームワークを解説してくれるため、未知の分野ではありますが手触り感を持って学ぶことができています。
公にされない実情を赤裸々に語る
この授業ではゲストスピーカーから、「missionを貫くのか、ファンド持続のためにreturnをとるのか板挟みになる」、「優秀なPE/VC出身者を雇いたいけど、returnが低いから十分な報酬が出せない」、「大金持ちのfoundationなら好き放題投資できるのでは?と思いきや、投資方法によってはtax benefitが無くなり苦しくなる」など、impact investmentが抱える課題が正直に語られます。普段の生活では知ることができない情報なので、将来のキャリアとして考えている人には大変貴重な機会だと思います。なお、ネガティブなことばかり書きましたが、social impactの創出が上手く投資先の市場価値向上に繋がり成功しているファンドの例も聞くことができます。
総合格闘技的なソリューションの提供
impact investingは、ソーシング 、デューデリ、モデリングといったPE/VC業務はもちろん、クライアントのニーズ(創出したいimpact/達成すべきreturnにかかる制約等)の把握、対象地域の抱える社会的問題の調査、インパクトの計測方法の検討、今後の組織運営や投資先サポートに関するsuggestionと行った、ファイナンス、コンサルティング、social impactの知見を総動員してのソリューション提供が求められます。非常にexcitingで知的好奇心を刺激されるプロジェクトだと思います。
経験値と志の高いチームメイト
これはチーム次第かもしれませんが、基本的にはファイナンスの業務経験がprerequisiteとなっているので、チームメイトの知識と経験のレベルが高く勉強になることがとても多いです。また、私のチームにはimpact investmentの経験者もおり、将来的にもsocial impactに関わる仕事をしたいという人が多いので、単なる授業という意識ではなく、地域のために貢献しようという思いでプロジェクトに取り組んでいます。
心からやりがいを感じられるプロジェクト
これもプロジェクト次第ではありますが、私たちの場合は「頭の体操」ではなく確実に立ち上がる案件なので、提案したソリューションが実現される可能性が高く非常にやりがいがあります。また、social impactの長所として基本的にはwin-winを目指すので、クライアントだけでなく投資先候補、さらには近隣の他のファンドもプロジェクトに協力的で、データが手に入りやすく分析に集中できます(これはクライアントの性質にも拠るところが多く、for-profitの場合は違うかもしれません)。
このように非常に充実した授業で、今のところ総じて参加者の満足度も高いため、来年以降も継続されるのではないかと思います。social impact / impact investingに興味のある方には是非受けて頂きたいです。
Leadership Effectiveness and Development (LEAD) Lab II
LEAD IはBoothで唯一の必修科目で、9月に入学してから一番最初に行われる授業です。最初に行われる唯一全学生が受講する科目である為、学生各個人のリーダーとしての育成に加えて「Booth Communityとしての一体感を作り出す」ことが命題となっています。一年目から自由度が高いカリキュラムだからこそ重要なBooth特有の授業となっています。このLEAD Iは、生徒を大学に迎えるという意味も含めて2年生のファシリテーター(通称”LEAD Facil”)がすべてを運営する仕組みとなっており、その準備を春学期中に行います。春の準備と秋の運営、LEAD FacilになることこそがLEAD IIなのです。
これだけを伝えられると、LEAD IIは授業というより課外活動に近いように感じられると思います。しかし、行動心理学に長けているだけあり、LEAD IIを主観するLeadership Development Office (LDO)の熱意はかなり高いです。Coachingや人材育成に興味がある方には欠かせない授業であると言えます。私は他にもManagement and Organizational Behaviourの授業を3科目受講しましたが、LEAD IIが最も幅広く且つ深い理解を必要とする授業だと感じています。
また、LEAD Facilとして受ける恩恵は様々ですが、トップ5を以下にて記します。
1. Leadership Development Coachが一人一人に付き添う
10週間の準備において、他チームメイトとの関係や接し方を観察され、マンツーマンで指導を受けます。自分では気づいていない”癖”、対人関係をより円滑に進める為のツールを個人に合わせてCoachingされます。
2. 学部生を使った実証実験の機会
Booth入学の学生にベストな経験を提供する為、学部生を使いLEADワークショップの実証実験を試みます。行動心理学の論文やワークショップを隅から隅まで学んだところで、本番はやはり違います。学部生の反応に応じて、9月のLEAD Iの調整を行います。
3. LDOオフィスの使用許可
LDOオフィスは、規模的にはアドミッションオフィスと同等のサイズ感があり、ワークスペースはもちろん、コーヒー(一日一杯)やその他アメニティが揃っています。また、過去LEAD FacilやLeadership関係の教授等と交流できる場となっています。Polsky Centreまではいかないですが、かなり親密な雰囲気なのでチーム運営の相談等は気軽にできる環境となっています。
4. アラムナイネットワークとの関係
過去のLEAD Facilはもちろんながら、LEAD Iはアラムナイの協力を必要とする部分もある為、LEAD Facilとしてかなり上のアラムナイとやり取りすることがあります。LEAD Iの暴露に繋がってしまう為、これ以上のコメントは伏せますが、実際に経営を担っているアラムナイとの会話から学ぶことは多くあります。
5. 違う学年の生徒とのネットワーク構築
LEAD Facilは週2回の授業をかけ持つことになる為、100人超の1年生と10週間対面することになります。また、LEADでは深くProfessional及びPrivateの話しをする為、LEAD Facilと1年生の絆はかなり強いものとなります。他リーダーシップポジションでも学年を超えた交流はあるものの、ここまで大人数と深い関係を築ける機会は他にないと言っても過言ではありません。
Coaching、人材育成、マネージャーとして欠かせないスキルを学べる最高の授業だと思っていますが、拘束時間は長いです。週10時間の授業時間に加えて、Leadership Orientation Retreat II (LOR II)というオフサイト研修、授業外での準備、さらに他2年生が9月を丸々休暇に充てる中、1年生と日々格闘するというスケジュールになっています。
拘束時間に対する費用対効果はどうなのか?
私個人の答えはまだ出ていないですが、歴代LEAD Facilで受講して後悔したという方はいないそうです。
皆様が9月にLEAD Iを開始するのをお待ちしております。