TNDC - Battle of the Bands
1年生のざきやまです。
私はAudioBoothというChicago Boothの軽音楽部(バンド活動中心の音楽クラブ)に所属しています。数あるAudioBoothのイベントの中で最も注目度の高いのが、毎年5月に行われるBattle of BandsというChicago BoothとKelloggのバンド対抗戦であり、両校から2バンドずつ計4バンドが演奏し、両校教授の評価に基づき勝者が決まります。
先日、Battle of Bandsに出演できる2枠という限られた枠を狙って、Chicago Booth内の代表バンドを決定するオーディションイベント(TNDC AudioBoothと呼ばれています)が開催されました。
このイベントはChicago Boothの4バンドが出演し、評価の高い2バンドがBattle of Bandに進めるという仕組みになっており、各バンド様々な工夫を凝らしたパフォーマンスを見せてくれました。
私はChicago Booth入学直後に、Beluga Failsというロックを中心とした2年生バンドに、期待の新人として(嘘です)加入し、既に1回ライブを経験してます。今回はそれに加えて5Forcesという、いかにもビジネススクールらしい名前の1年生バンド(私が命名しました。笑)に参画しました。5Forcesは比較的有名でポップな曲が中心です。今回のブログ投稿では、趣旨を少し変え、単にChicago Boothのイベント紹介に留まらず、何気ないバンド活動の中から得た私のTakeawayを共有させて頂きます。
日本がガラパゴス化している領域は多々あると思いますが、私は従前より特に音楽業界が著しいと感じていました。
サッカーは中田英寿や本田圭佑、野球はダルビッシュやイチローの様な世界レベルのプレーヤーが日本から飛び出して活躍をし、SONYやTOYOTAといった日本の製造業も世界で広く認知されています。ファッションブランドもUNDERCOVER、UNIQLO、BAPE(アジア)といった世界レベルで認知されているブランドが数多くあります。他方で、何故日本の音楽シーンからは世界トップレベルのアーティストが登場しないのでしょうか。
私は今回のバンド活動を通じて、日本とグローバルスタンダードの大きな隔たり、それに伴って日本の音楽シーンがグローバルに通じない理由のヒントを得た気がします。
- 邦楽は決まりきった楽曲構成、且つメロディー重視となっている一方、洋楽はフレキシビリティが高く、リズム重視
日本でバンドをやっていた頃は、「よし、じゃあ2回目のBメロからやり直そう」という表現を使っていました。日本の楽曲はよくAメロ、Bメロ、サビ、Cメロ、という表現をされるかと思います。これグローバルスタンダートな表現ではありません。グローバルではVerse(Aメロ、Bメロに該当)、Chorus(サビに該当)、Bridge(Cメロに該当)と表現します。つまり、Chorus前に必ず2種類のVerseが存在する必要はないのです。つまり洋楽の方がシンプルな構成となっているケースが多いです。また、メロという表現を使用している通り、邦楽はメロディー重視である反面、洋楽はリズムや一体感、ノリの良さを重視する傾向があります。AKB48の恋するフォーチュンクッキーとTaylor SwiftのShake It Offは同じアイドルソングでも全然違いますよね。そもそもリスナーのニーズが全く違う中で、邦楽が洋楽リスナーに刺さるという事は難しいと考えられます(BABYMETALやきゃりーやピコ太郎のような一部のネタアーティストは除いて)。
- 日本は音楽言語がガラパゴス、初等音楽教育の時点でガラパゴス化されている
皆さん、「ドレミファソラシド」や「ハ長調」という表現、日本でしか使用されていないことを知ってますか。バンドで議論している時に「ミの音鳴らしてもらえる?」といっても通じません。グローバルスタンダードでは、単音表現も音階もコードと同様にCDEFGABを使用します。日本では単音とコードと音階は切り分けて考える人が多いと思いますが、グローバルでは同じコードを使用するので「この音、CメジャーとCマイナーのどっち?」、「この曲のキー(音階)はAマイナーだよね?」という確認をよくとります。つまり単音ではなく常にコードで音階を認識していく癖がついています。これは日本の音楽教育において使用言語が「ドレミファソラシド」、「Cコード」、「ハ長調」と全て別の表現をする事による問題かと思います。グローバルではこれは全てCDEFGABで話されますのでかなりシンプルでコミュニケーション・コストが低いです。
- 日本は観客のアーティストに対するサポートが限定的
日本のライブハウスに行ったことがある人は分かると思いますが、有名アーティストでなければ、①皆腕を組んで見ている、②友人と思われるグループだけが前方でノッている、の何れかの現象が見られるかと思います。米国のバーやライブハウスは日常的に近隣住民が飲みついでに足を運び、見知らぬバンドにエールを送ります。カッコ良ければCDを買い、ファンになります。従ってかなり暖かい歓声の中でアーティストは演奏出来ます。日本にはそもそもライブハウスに足を運ぶ習慣も文化もないですし、バンドは金銭的にも精神的にもファンのサポートを得る事が難しいです(一部のビジュアル系バンドを除く)。また、米国のアーティストは個性的ですが、日本のアーティストはどのバンドも同じMC(曲間のトーク)やパフォーマンスをします。これも横に倣えの文化の帰結ではありますが(TOEFLのI live in Tokyoと同じですね)、アーティストの個性を押し潰す要因にもなっているかと思います。
- 日本ではジャンル毎に音楽カースト制が存在する
私が学部時代だった頃、日本でコテコテのR&BやHip Hopを聞くのは若者の一部のB-BOYとか呼ばれているクラブ常駐軍団でしたし、パンクやストリートロックを聞くのはダボダボの服を着たスケーターやタトゥーの入っている怖そうな兄ちゃんだけでした。今でこそ垣根は下がっていると思いますが、日本では依然ジャンル毎に縄張りの様なものが存在し、他民族を寄せ付けない感覚があります。他方で、米国ではおじいちゃんがエミネム歌えますし、小学生のキッズがクラシックを聴いています。ナイトクラブだって、年配のおじさん達が踊り狂っている米国とナンパスポットでしかなく、年配の方が来場したら白い目で見られる(若しくはどっかのVIPかと思われる。笑)日本のクラブでは全く敷居が異なります。こういった慣習自体が音楽へのアクセスを制限しているのかもしれません。
単なるバンド活動の中にも様々なTakeawayが存在し、こういった活動は同世代の文化的慣習を知る有益な機会になります。私はMBA留学を通じてアカデミックのみならず、グローバルな教養、文化、トレンド等も学びたいと思っていたので、音楽に留まらず様々な活動に積極的に関与することにより、今後も更なるTakeawayを得ていきたいと考えております。
尚、オーディションイベント(TNDC AudioBooth)は大成功に終わりました。各バンド6曲を演奏し、私はBeluga FailsでBattle of Bandsに進める事になりました。前回のライブと違い、今回は大観衆に囲まれての演奏だったので本当に非常に気持ちよかったです。5月18日のBattle of BandsでもKelloggに負けない様に良い演奏が出来る様に頑張りたいと思います。