Why MBAと現実に関する差異分析
1年生(新2年生)のWです。ちょうどシカゴに来てから1年が経ちました。今回は自分にとっての「Why MBA」とこの1年で経験した「現実」がどの程度合致していたか、裏を返せばこの二つの間にどの程度のギャップがあったのかについて書いてみようかと思います。実際に出願エッセイに書いた書かないは別として、また何となくこれもしてみたいなというのも含めて私は以下のような理由でMBAを志しました。
1. General Management、及び上級レベルのFinanceを学びたかった
2. 仕事のプレゼン、ミーティングで使えるくらいの英語力を身につけたかった
3. (ただ漠然と)グローバルな組織でも通用するリーダーシップ・スキルを身につけたかった
4. 世界、特にアメリカにはどの程度優秀な人間がいて、自分がその中でどの程度のレベルか感じてみたかった
5. ネットワークを広げたかった
6. 全速力で仕事をしてきた分、少しだけ休みたかった
なお、私は社費留学であり、以上のWhy MBAも派遣元の会社に残って貢献するという前提で書かれています。ただ、仮に派遣元をクビになった場合でも、MBAがあれば再就職先も見つけやすいだろうからMBAをとっておけば安心という思いもありました。さて、1年間経ってみての期待値と現実のギャップは以下のような感じです。
1. General Management、及び上級レベルのFinanceを学びたかった
→期待値を上回り大満足!
私はこれまで金融機関で株式アナリスト(ファンダメンタルズ分析)として約5年、経営企画で約2年半のキャリアを積んできました。卒業後まずはファンド・マネージャーとして仕事をしたいと思っていたので幅広いプロダクトのヘッジファンドの運用をできるくらいのFinanceの知識と、長期的には派遣元の経営陣の一員としてグローバルなビジネス展開を推進したいと思っていたことからGeneral Managementに関する勉強をしたいと考えていました。
学びという意味では、この1年間大変満足しており私の期待値を大きく上回りました。特にFinanceについては、このブログの過去の記事にもあるようにレベルの高い科目を一年生のうちから受講できるため大変満足しています。一方で、Boothでは好きな科目ばかり取れてしまうので、興味のあるFinance、Econometrics、Statistics系の科目ばかり取ってしまい、正直それほど興味があるわけではないGeneral Managementの科目はほとんど受講しないまま1年生が終わったのが反省点です。
2. 仕事のプレゼン、ミーティングで使えるくらいの英語力を身につけたかった
→まったくダメ。もっとインテンシブかつ継続的な努力が必要。。。
私はいわゆる純ドメであり、派遣元の会社が大きくグローバル展開に舵を切る中で高いレベルの英語力がないと生き残れない、面白い仕事をさせてもらえないという思いがありました。この1年間、英語に囲まれて生活してきたため、少しは英語力が上がった気がするものの、全く仕事で使えるレベルとは言えないし、英語で映画やドラマを観ていてもまだまだ十分に聞き取れるわけではない、というレベルです。授業やスタディ・グループでも英語での聞き取りと発話ではどうしても日本語に比べて反射速度が遅れるため、英語で測った自分の戦闘能力はかなり低いなと思うこともしばしばです。当たり前ですがMBAに来たからといって英語力が爆発的に向上するわけでは決してなく卒業後も含めて根気強く取り組む必要があるのだなと感じています。
3. (ただ漠然と)グローバルな組織でも通用するリーダーシップ・スキルを身につけたかった
→???
BoothにはLEADというリーダーシップに関する科目があり、その中でConflict Management、Self-Awareness、Presentation、Active Listeningなどなどについて様々なアクティビティやディスカッションを通して学びます。ただ、リーダーシップ・スキルというソフト・スキルは、ハード・スキルと違ってふわふわしていて掴みどころのないものですし、短期間で身につくものでもないと思うので、現状、自信を持って何かを身に付けた!とは言えない感じです。
一方で、さまざまな国籍から構成され、多種多様な個性を持つ同級生と組む各種授業のスタディ・グループにおいて、どのようにプロジェクトを進めていけばよいかということを学べたのはとても有益だと感じています。このような経験を細かく積み重ねていくことで、将来的に多様性に富んだ組織でも仕事していける力が少しは身につくのかなと期待しているところです。
4. 世界、特にアメリカにはどの程度優秀な人間がいて、自分がその中でどの程度のレベルか感じてみたかった
→自分の将来のキャリアに関わる科目を数多く取ることで、Finance分野でのアメリカのレベルの高さを実感。そして自分のレベルも良い意味でよく知ることができ大満足。
アメリカは、言わずと知れた金融先進国。特に私が卒業後携わるであろう資産運用の業界においては日米の差は歴然としており、日本はアメリカから理論及び運用手法などの知から実際の運用商品まで、運用に関わるさまざまなものを輸入しています。このため、アメリカのレベルの高いFinance Programでは何が教えられているのか、MBAを取ってファンドマネージャーを志すやつはどのくらいすごいのか、そしてその中で自分はどの程度のものなかを肌で感じてみたかったという思いがありました。特にBoothは、そのFinanceのプログラムではMBAの中ではとても有名なので、資産運用業界を志す優秀なやつらも集まるであろうという強い期待がありました。
実際に一年間、上級の証券投資論なども受講してみて感じたことは、最新で、レベルが高く、かつ実務的なことが教えられている、そんな科目を若い大学生(シカゴ大学のおそらく経済学部生とか統計学部生?)が受講・聴講したりもしている、学生のレベルは今まで見たところではMBAにはとびぬけた天才はいないという感じだが平均的に皆とても優秀、そして自分は決してこの中で抜きんでることはできないが武器になる強み(そして弱みも)を認識、といったところでしょうか。
学生のレベルについては、BoothといえどやはりMBAなので、PhDの学生と違って圧倒的な天才というのはいない感じです。しかし皆平均的にレベルは高く(頭の回転が速いし、何より努力家)、授業での発言やスタディ・グループでは多くのことをクラスメイトから学ぶことができます。こうした幅広いバックグランドを持つ優秀なクラスメイト達とスタディ・グループやプロジェクトに取り組むことで、自分が平均的に彼らより劣っている部分、優れている部分を認識し、ハードスキルだけでなく、ソフトスキルも含めて何を武器に戦っていけば良いかをおぼろげながら知ることができたのは大きな収穫だったと思っています。
5. ネットワークを広げたかった
→想像以上に広がったのが日本人とのネットワーク
MBAは受験準備段階からして予備校などで様々な人と知り合える貴重な機会を提供してくれますが、当然のことながら学生生活が始まるとネットワークは格段に広がります。同じcohort(クラスのようなもの)、スタディ・グループ、パーティーを通じて日本以外に数多くの友人ができるのは、これまでずっと日本で生活してきた自分にとっては少し不思議な感じがしますがとても楽しい経験です。
こちらに来てから、当初の予想以上に広がったのが日本人とのネットワークです。MBAの中での日本人学生のネットワークはさることながら、MBA以外でも、University of ChicagoのPublic Policy School、Law Schoolの日本人学生や近所にあるNorthwestern University のLaw Schoolの日本人学生、またシカゴの日本企業に勤めている方々など数多くの日本人と友人になる機会がありました。MBAでアメリカまで来て日本人と友人になってもしょうがないのではとお思いになる読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、もし卒業後日本に戻って仕事をする場合にはこのような日本人とのネットワークは貴重なものになるかもしれないと思っています。
ちなみに、私はあまり参加していませんが、BoothのStudent GroupやAlumni Clubが主催するコンファレンスやAlumni Eventに積極的に参加するとアメリカのBusiness peopleとのネットワークは大きく広がると思います。
6. 全速力で仕事をしてきた分、少しだけ休みたかった
→充電し、いろいろと考えることができた
1年生の学校がある間は、授業や各種のアクティビティで比較的忙しいため(もちろん仕事よりは全然まし)あまりゆっくりと休むことはできませんでしたが、夏休み中は私は特にインターンをしていないので当初期待していた通りに充電することができています。しかし、インターンをしている人にとって夏休み中はインターン漬けで、学校が始まったらまた忙しくなってしまうので、MBAに来ても結局あまりゆっくり休むことはできないかもしれません。
ただ、今まで忙しく仕事をしてきた人にとっては、MBAの二年間でいったん歩みを止めて、改めて必要な勉強をし、本を読み、多様な価値観を持つ同級生と話し、これからの人生について考えることはとても有意義なことではないかと思っています。