Chicago はFinance Schoolか?
1年生のKSです。思えばMBA一年目も既に終わりが見え始めており、出願者であった(そして会社員であった)一年前が遠い日のように感じられる今日この頃です。
この一年間で、ビジット、知人の紹介などを通じ、色々な方々にシカゴブースについてご案内させて頂きました。今回は、その中で最も多く質問された事項について回答させて頂きたいと思います。(あくまで私見です!)
①シカゴはファイナンススクールでしょ?
これは最も多く寄せられる質問であり、私自身も「シカゴ=ファイナンス」のイメージをもって入学しました。そして実際、ファイナンスに強みをもっているのは事実です。例えば、今学期はラジャンとカシャップというアメリカを(というか世界を)代表するエコノミストの授業を2つとっていますが、世界から注目される経済学者の授業を受講し、インタラクティブに意見を交わすことができるのは、シカゴならではの魅力だと思います。他にも、ノーベル賞を受賞したベッカーや、ノーベル賞の有力候補にあげられているファーマ、金融危機時にFEDで活躍したクロヅナー、中銀界のカリスマウェーバーなど、初歩レベルからPhdレベルまで、まさに豪華絢爛のファイナンス教授陣といった感じです。
ただ、実際にシカゴで学生生活を送ってみた身としては、「シカゴ=ファイナンススクール」といわれると違和感を感じるのも事実です。なぜなら、ファイナンススクールでもあるが、マーケティングスクールでもあり、アントレスクールでもあるからです。これは、フレキシブルなカリキュラムと一流の講師陣、豊富なリソース、の賜物です。2年間自分の興味の赴くまま授業を組み合わせることができ、ひとつの分野で掘り下げるもよし(Phdレベルまでいけます)、はたまた苦手分野を中心に幅広く履修することも可能です。極端な例ですが、ファイナンスが嫌いで殆どファイナンスを受講していない学生や、起業ネタ集めとアントレ授業中心の生活でポルスキーセンター(起業関連のリソースセンター)に入り浸っている学生もいます。つまり、自分の興味にあわせ、アントレスクールにもマーケスクールにもカスタマイズすることが可能です。
当然、アントレ・マーケなども一流の教授陣が揃っており、アントレを担当しているカプランは、おそらくアントレを学ぶ学生ならば(シカゴ以外でも)殆どが知っているビッグネームではないでしょうか。また消費財・コンサル・ブランドなど様々な企業がリクルーティングにやってきており、昨年は相当な人数の学生がコンサルのM社に内定しました。
アントレなどは、実際に起業する学生も多く、New Venture Challengeというイベント+授業では、最終的にPE・VC・起業家に対しアイデアを売り込み、優れたアイディアに対しては賞金や投資がつきます。Bump(日本でいう、携帯の赤外線通信にあたるもの)やGrouponといった、今をときめく起業もシカゴブースのアルムナイによるものです。
一応、必修科目に近いものはあり、「組織管理」「オペレーション」などの各カテゴリーが設定されていますが、レベル・内容・履修時期はフレキシブルに選択できるため、あまり縛られることはありません。また、同一教授が同一内容で、午前・午後・夜(ダウンタウンキャンパス)と教えており、殆どの場合、振り替え可能なので、就職時期など非常に便利です。
②シカゴはレクチャー形式?
最も意外な質問のひとつですが、よく質問を受けます。日本の学校のような、理論を先生が一方的に教える、というようなスタイルをイメージされている方が多くでびっくりします。この一年間、シカゴで色々な科目を履修してみてみましたが、日本の学校のようなレクチャーというのは全くありませんでした。たしかに、一応、レクチャー形式にあてはまる授業はあります。経済学や投資理論、分析系の授業などは、その性質上、理論的・レクチャー的になりがちです。
ただ、レクチャーだといわれると、これも違和感を感じます。理論的な枠組みにおいても、カレントなトピックや実際の事例にあたはめて解説する、プラクティカルな内容のものが多いですし、反論・コールドコール・質問が四六時中飛び交っている、という意味では所謂レクチャー(先生が一方的にしゃべっている)にはあてはまらないと思っています。たとえば、私は先にあげたカシャップの”Analytics of Financial Crises(金融危機分析)”というちょっとマニアックな授業をとっており、リーマンショック・PIGS問題・日本の住専処理、などをマクロ経済学・ファイナンス理論を使って分析していく、という(文面だけでは全く面白みの伝わらない)授業をとっていますが、WSJなどに頻繁に寄稿しているエコノミストの生の声を聞け(東電に関する記事もあります)、ヘッジファンドや投資銀行で実際に金融危機を経験したクラスメートの経験や意見(そして反論)を聞け、コールドコールの恐怖に常にさらされる(キャラの強い教授なのでアメリカ人ですら結構びびってます)、という意味で、レクチャー形式とは程遠いものとなっています。
また、ストラテジー、コーポレートファイナンス・マーケティングなどの授業は、その大半がケースディスカッションで構成されていますし、ラボなどのように実地でコンサルティングをするような授業がかなり多いです。また、トレックやカンファレンスなど、学生が自主的に運営している研修機会もふんだんにあり、おそらくこれらのリソースを2年間で使い倒すのが不可能だと思えるくらい素晴らしいです。
授業を通じて共通項を探すとすれば、シカゴブースでは、高い分析能力が要求されている、とはいえるような気がします。マーケティングなどにおいては定性分析(いわゆる3P,3Cなど)も勿論ですが、回帰分析などを駆使したデータドリブンマーケティングなどに特に定評がありますし、クラスメートの分析能力の高さにはいつも関心させられます。アメリカ人が数字に弱い、と日本人の中でよく言われる事象は、少なくとも当校においてはあてはまらない気がします。
今回は、授業スタイルを中心に書いたので、そのほかの学生生活などに関しては記載しませんでしたが、MBA学生の旺盛な知的好奇心を満たしてくれる(そして過剰に与えてくれる)という意味において、シカゴブース以上の環境はないのではないかと自負しています。